2014 Fiscal Year Research-status Report
発達障害における身体図式に着目した新規評価法の開発と教育現場での実用に向けた挑戦
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25590287
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Research Institution | Gunma University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
北爪 浩美 群馬医療福祉大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80641456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 真也 群馬医療福祉大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40641460)
山口 智晴 群馬医療福祉大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50641461)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発達障害 / 自閉スペクトラム症 / 姿勢保持 / 身体認知 / 足関節 / 運動発達 / 体育座り / バランス動作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、発達障害児における運動発達の特徴を知ろうとするものである。発達過程での運動発達の特徴を捉える事により、児や周囲の抱える問題について早期に関わることができ、就学時あるいは学校生活の中で具体的な対応を提案することができる。それは学習を進める上で有益であり、児の積極的な学習への取り組みを支援するものである。 運動発達の特徴を捉える方法として、本邦の教育場面で使用される体育座りにおけるバランス動作を見ることとし、平成25年度については2~6歳の定型発達児を調査した。平成26年度は、6~9歳の児に対して同様の調査を進めるとともに、小児科を受診し、確定診断されている児を対象に調査を行った。調査は動画撮影にて行い、ダートフィッシュ・ソフトウエアによる分析を行った。体育座りの姿勢は、概ね全対象児が実施可能であったが、下肢を浮かせた状態でバランスをとる姿勢保持では、年齢によって特徴が見られた。最も特徴が現れたのは、足関節の動作であった。傾向として、幼児は姿勢を保持しようとする際に足関節に力を入れて背屈させていたが、学童児ではその傾向は少なくなり、足関節に力を入れずに体幹の力でバランスを取る傾向があった。一方、自閉スペクトラム症と診断されている児についてはどの年齢においても足関節に力が入り背屈する傾向が見られ、体幹でのバランス保持が未熟である可能性が考えられた。これに対し、注意欠如多動性障害や他の診断の学童児については、足関節背屈は見られなかった。 自閉スペクトラム症の運動発達の特徴については、協調性の悪さなどは研究されているが、発達段階における指標は明らかになっていない。本研究で体育座りによるバランス動作の特徴が明確になれば、児の運動発達がどの段階にあるのか、また、どのような取り組みをすることが学習場面での支援になるのかについて、早期から提案することができる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度中に予定していた定型発達児の調査が遅れ、平成26年度にずれ込み、診断されている児の調査が平成26年度後半になったが、運動発達の特徴についてある程度明確に差が見られる身体部位が特定されたため、研究をまとめていく作業に取りかかることが出来るまでに至った。しかし、診断児の調査については妥当性を得るために継続して実施する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までに調査済みのデータについて継続して分析を行い、体育座りでのバランス動作について定型発達児の発達過程と発達障害児、特に自閉スペクトラム症の児の発達過程を比較する。明らかな特徴的傾向が見られれば、自閉スペクトラム症の要素を持つ児について、早期から介入することが出来るようになる。特に姿勢保持の苦手さは、学習場面での集中力の低さなどにも関連することが予想されるため、早期介入への示唆は児の発達を促すためにも重要であると考えられる。 また、本研究において実施している体育座りは幼児期から集団生活の中で多く取り入れられている姿勢であるため、特別な検査の場を設けることなく、発達過程において何らかの苦手さを持つ児の存在に気付くことが出来るため、教育を進める上で有効であると考えられる。 しかし、一方で容易に見分けられることについては、児に対して誤った意識を生む原因となることも十分に考えられる。そのため、今後はその成果の妥当性に対して十分な配慮と詳細な分析を進めた上で、適切な結果を明らかにしていく。 また、今回の診断されている児の調査においては、すでに何らかの投薬による治療を受けている児もいた。平成26年度の調査においては、投薬を受けている自閉スペクトラム症児についても足関節の背屈が見られたが、妥当性を確実にするために継続して調査することとする。
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Causes of Carryover |
学会参加費用について、当初の予定より低額で処理できたため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度については、調査分析の継続と冊子の作成、学会誌への投稿や学会での発表を計画している。そのため、パソコン、印刷代、学会参加のための旅費等が必要になる。
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