2013 Fiscal Year Research-status Report
日本語の発達性ディスレクシアの類型化と認知機能障害の解明
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25590288
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
杉本 明子 明星大学, 教育学部, 教授 (30311145)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 発達性読み書き障害(ディスレクシア) / 認知機能障害 / 検査法 |
Research Abstract |
本研究は、(1)日本語の発達性読み書き障害(以下「ディスレクシア」と呼ぶ)の児童が示す読み書きの様々な特性について実験・観察等により包括的に検討し、ディスレクシアの症状を類型化するとともに、(2)各々のディスレクシアの症状の背景にどのような認知機能障害があるのかについて、様々な検査・心理学的実験を通じて実証的に明らかにすることを目的とする。さらに、得られた知見を基に、(3)ディスレクシアを診断するための客観的な診断評価検査法を開発するための礎となる情報を提供するとともに、試験的なディスレクシアの検査法を開発することを目指す。 平成25年度は、以下のことを実施した。 1.国内外のディスレクシア研究に関する文献・資料を収集し、文献データベースを作成した。また、収集した文献・資料を、(1)理論的枠組、(2)認知障害を診断するための方法論・検査法、(3)ディスレクシアの症状のタイプ、(4)読み書きの認知・発達モデル等の観点から分類するとともに、各々の特徴を明らかにして整理・考察した。 2.作成した文献データベースを利用して、先行研究に見られるディスレクシアの認知障害を診断する方法・検査法を整理・分析した。さらに、これらのうち有効かつ簡便であると考えられる検査法、及び、研究代表者が試験的に作成した認知障害を診断する検査法を用いて予備実験を行い、各々の検査法がどのような認知障害を特定できるのかについて検討した。 3.作成した文献データベースを利用して、先行研究に見られるディスレクシアの症状を類型化した。さらに、ディスレクシア児がどのような読字・書字の困難・障害を持っているのかに関して予備調査を実施した。得られたデータの分析結果の基づき、ディスレクシアの典型的な症状を特定して類型化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の研究計画では、ディスレクシア児を対象とし、心理学実験や読字・書字における行動の観察・録画により、どのような困難・障害や症状を示すのかに関してデータを収集することを予定していた。しかしながら、ディスレクシア児の読字の活動の記録・分析を行う為に必要な「視線追尾・計測システム」を平成25年度の終盤まで購入することが事務手続き上不可能であった為、当該データ収集はまだ終了していない。 しかしながら、この点を除いては、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、主に次の2つの方向で研究を推進していく。 1.異なるディスレクシアの症状の背景に、どのような認知機能障害(音韻障害、視知覚障害、意味システム障害など)があるのかに関して実証的に解明する。ディスレクシアのサブタイプと認知機能障害の関係性について、実験データを統計的に解析することにより明らかにする。 2.「ディスレクシアの読字・書字の認知モデル」を構築する。Coltheartら(2001)の提唱した「二重経路モデル(dual-route model)」を詳細に検討し直し、日本語に即した神経心理学的情報処理モデルを構築し、日本語のディスレクシアの情報処理過程(認知過程)と障害の個所について、ディスレクシアのサブタイプ別に考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
被験者の視線の動きや処理速度に関するデータを収集・分析する視線追尾・視線計測システム(アイトラッカー及び関連ソフト)を購入する為に200万円を予算として計上していたが、業者から1,766,100円で購入することができた為、差額分233,900円が次年度使用額として生じた。 次年度使用額として生じた金額233,900円は、平成26年度研究活動費において、人件費・謝金(実験・調査参加者への謝金、研究助手への謝金)150,000円、交通費83,900円として使用する。
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