2013 Fiscal Year Research-status Report
強磁性体ナノワイヤのボトムアップ形成による低消費電力磁気メモリの研究
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25600034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原 真二郎 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 准教授 (50374616)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 強磁性体ナノワイヤ / 強磁性体ナノ構造 / 選択成長 / 3次元磁気メモリ / ボトムアップ形成 / 半導体ナノテクノロジ / スピントロニクス |
Research Abstract |
次世代低消費電力磁気メモリとして注目される3次元レーストラック型磁気メモリ(RM)素子実現に向け、独自に開発した強磁性体ナノ構造のボトムアップ作製技術を応用した横型および垂直自立型強磁性体ナノワイヤの複合構造によるRM素子を提案し、その試作を目指す。これを目的として本年度は、(a)横型強磁性体ナノワイヤ(NW)の作製および、(b)その構造評価・物性評価を中心に研究を推進した。 プラズマCVDによりGaAs(111)B基板上にSiO2膜を20nm堆積後、電子線(EB)リソグラフィとドライエッチングによりGaAs表面を露出させた、長さ500nm・幅100nmの周期的開口パターンを有するマスク基板を作製し、有機金属気相選択成長法によるナノ構造作製を行った。周期的開口部にのみAlGaAsをバッファ層とした六角錐台型MnAsナノクラスタ(NC)列を形成し、隣接するNC端面の接合により横型MnAs-NWを作製した。依然サイズ均一性は低いが、格子不整合系にも関わらず<-110>方向の長さ4500nm(最長)、幅300nmの横型NWを実現した。1000Gの外部磁場を<-110>方向に印加後、磁気力顕微鏡により種々のNWの磁区構造を室温で評価した結果、長さ1500nmの構造では全て単磁区を示す一方、長さ2000nm以上のNWでは<-110>方向に多磁区を形成することが分かった。NWの幅が700nm以上の場合、<-110>方向と垂直な<-211>方向に多磁区を形成するが、2000Gの外部磁場を印加した結果、単磁区に変化した。この結果は、横型MnAs-NWの磁区構造を外部磁場とNWの形状磁気異方性により制御可能であることを示している。さらに海外研究協力先との連携により電極形成プロセス技術等を確立し、隣接MnAs-NC間のギャップを非磁性金属Auで埋めた種々の横型MnAs-NW素子を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった横型強磁性体ナノワイヤ(NW)の作製および、その構造評価・物性評価については、サンプル作製後、走査型電子顕微鏡・原子間力顕微鏡によるナノ構造評価および、磁気力顕微鏡による磁区構造評価を鋭意推進し、電気特性評価に向けた電極形成プロセス技術もほぼ確立したため、おおむね順調に進展していると判断する。ただし、依然、選択形成した横型強磁性体NWのサイズ均一性は低く、作製条件の最適化が必要である。本年度作製した構造では、横型強磁性体NWの幅は約300nmと比較的広いが、NWの長手方向、すなわち<-110>方向と垂直な<-211>方向のサイズ(NWの幅)がNW内部の磁区構造に与える効果に関する知見は、本年度ある程度得ることができた。NWの幅と形状磁気異方性の効果に対する評価とのフィードバックにより、作製する横型強磁性体NWのサイズ・アスペクト比の最適化を詳細に検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本手法では、選択形成に用いるマスク基板上に予め作製する周期的開口パターンに沿って横型強磁性体ナノワイヤ(NW)を選択形成するが、AlGaAsバッファ層形成後のAlGaAsナノクラスタ(NC)では極めて高いサイズ均一性も、MnAs-NW作製後に低下する傾向が確認されているため、MnAs-NWの結晶成長温度・Mn原料供給量・SiO2マスク膜厚・AlGaAs層膜厚等、作製条件の詳細な検討が必要である。また、隣接MnAs-NC間のギャップを非磁性金属Auで埋めた種々の横型MnAs-NW素子に対しては、今後の磁気抵抗効果測定に向け、海外研究協力先との連携を調整・計画済みである。さらに本年度概ね確立した電極形成プロセスを用いて、<-110>方向の長さ4500nm、幅300nmの比較的高いアスペクト比の横型NWに対しても素子の試作を開始しており、今後、試作した素子の電気的特性評価に注力する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では強磁性体ナノ構造の結晶成長のため、MOVPE結晶成長装置を用いる。本年度、主として推進した横型強磁性体ナノワイヤ(NW)に関する実験で、種々のサンプルをMOVPE結晶成長装置により作製したが、Mn等の原料ガス供給に用いる水素キャリアガスを供給する高圧ボンベの消費量が、期初の計画より少なかったことが一因と思われる。本年度後半では、前半で作製した横型強磁性体NWに対して、主に磁気力顕微鏡による磁区構造評価と、電気特性評価のためのデバイスプロセス技術の確立等に注力したため、MOVPE結晶成長装置を用いたサンプル作製実験の回数も、比較的に当初見込みより少なかった。また、期初に予定していた短時間雇用研究補助者(RA)の雇用を必要とする業務も本年度は生じなかったため、物品費の残額同様、次年度使用額に繰り越すこととなった。 次年度以降、横型および垂直自立型強磁性体ナノワイヤ(NW)の作製条件の詳細な検討および、デバイスプロセス技術の最適化、デバイスの試作・特性評価を順次推進する計画である。MOVPE結晶成長装置を用いた種々のサンプル作製実験や、特に、構造作製と素子試作が困難と予想される垂直自立型MnAs-NWに対する詳細な結晶成長条件の取得・ナノ構造評価・結晶構造分析等に予算を使用する計画である。結晶構造分析においては、分析用サンプル加工やデータ解析等に高い専門性・高度なノウハウを有する外部分析専門業者に分析を発注する予定である。また、得られた研究成果を公表するため、国内外の主要な学術会議への参加および、査読付き英文学術雑誌への論文投稿による外部発表を適宜実施する計画である。実験状況に応じて効率的・効果的に予算を使用したい。
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Research Products
(16 results)