2013 Fiscal Year Research-status Report
π共役ポリピリジニウムによるリビング重合性分子配線技術
Project/Area Number |
25600038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
彌田 智一 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (90168534)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | π共役系高分子 / 連鎖的重縮合 / 分子回路 |
Research Abstract |
平成25年度の実績は、①MALDI-TOF-MSを駆使した分析手法の確立、②固体表面上における重合停止反応の確立、③速度論的考察による適用範囲の検討、の三つが挙げられる。 具体的には、①ポリピリジニウムは、これまでMALDI-TOF-MS測定において、イオン化過程でフラグメント化が激しく、高分子領域にスペクトルを観測することが課題となっていた。また、ポリカチオン性ポリマーであるため、得られたスペクトルの解釈も困難であった。これらの課題に対して、緩やかなイオン化条件となるようマトリクス種、測定モード等を検討した結果、マトリクスがtrans-2-[3-(4-tert-Butylphenyl)-2-methyl-2-propenylidene]malononitrile (DTCB)、マトリクスに対してのサンプル量が10wt%、測定モードがreflectronの条件下で、比較的高分子領域までスペクトルを観測することができた。この手法を用いて10量体までのポリマーに相当するピークを確認できた。また、開始末端の結合したピークについても9量体まで確認できた。②芳香族求核置換反応において、モノマーより求核性の高いN,N’-Dimethhylaminopyridine(DMAP)を停止剤とした重合末端と優先的に結合を形成する停止反応を開発した。また、この反応は、固体表面上においても、十分に進行することも確認され、電極との結合形成にも応用可能である。③H-NMRを用いて、芳香族求核置換の速度論的解析を行った結果、ピリジン環の窒素の4級化により反応速度が、6×108倍速くなることを確認した。また、4位置換基の電子供与性と芳香族求核反応の相関を同様に、速度論的解析を行った結果、本反応はハメット則に従った。これらの知見を、実際の電極間において、理想的なワイヤリング重合反応条件を導出する事に応用可能である。 これらの成果をまとめた論文を、海外誌へ投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実績は、当初計画の80%程度進捗している。 具体的には、①ハロピリジンの連鎖的重縮合反応の速度論的検討と適用範囲の検討、②ポリピリジニウム成長端の定量的停止反応の開発、③ナノギャップ電極の作製、④理想的なワイヤリング条件の検討、を当初計画のロードマップに掲げている。上項目に対して、平成25年度の研究進捗は、ほぼ計画通りとなっているおり、①MALDI-TOF-MSを駆使した分析手法の確立により、分子量に関する知見を得た。②DMAPを停止剤とする成長端の定量的停止反応を確立し、固体表面への応用可能であることを確認した。③H-NMRを用いた反応追跡により、置換基の電子供与性を、重合反応の速度論的な制御パラメーターとして提案した。これらの結果は、理想的なワイヤリング重合反応条件の確立に向けて、必須の開発項目であり、有用な知見を得たと言える。しかしながら、生成されたポリマーは単離精製や分子量測定に対して、安定性に乏しいという新たな課題も明らかになってきており、今後の計画について、方向性を修正しながら遂行していく。これらの課題は、研究の大目的として掲げている高い信頼性・再現性のあるグリッド分子配線技術に必須の項目となると想定している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究目的を達成するための、自走式ポリピリジニウム配線の概念は、①4-ハロピリジニウム基を持つ重合開始剤を片方の電極に固定化、②電極表面より4-ハロピリジンの連鎖的重縮合の進行、③生長末端の4-ハロピリジニウムが、もう一方の電極表面に修飾したピリジル基によって重合停止からなる。 この概念に対して、平成25年度では、①MALDI-TOF-MSを駆使した分析手法の確立、②DMAPを停止剤とする成長端の定量的停止反応の確立、③速度論的考察による適用範囲の検討を行った。その過程で、生成ポリマーの単離精製や分析に対する安定性といった課題も明らかになってきた。 以上を鑑みて、平成26年度の研究実施計画は、①生成ポリマーの単離精製や分子量測定に対する安定性の改善検討として、ピリジン環上への置換基の導入や、弱い結合と推察されるピリジニウムのN-C結合の電子密度を高める分子構造について探索する。②ピリジニウム開始剤を固体表面に導入し、固体開始剤表面から開始する連鎖的重縮合反応を検討する。また得られる重合体のキャラクタリゼーション手法について、Raman測定により検討を行う。③得られる表面開始された重合体の導電性測定や、分子内の電子移動度測定等を実施し、物性面から配線技術に最適な分子構造を探索する。④これらの過程で開発された新規連鎖的重縮合の応用展開として、サイズや種類の異なる金属ナノ粒子間を、π共役系ポリマーで結合させた3次元ナノ粒子配線技術について検討を行う。
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Research Products
(2 results)