2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25600051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐甲 靖志 独立行政法人理化学研究所, 佐甲細胞情報研究室, 主任研究員 (20215700)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 1粒子追跡 / ナノプローブ / 細胞内環境 |
Research Abstract |
ナノメートルサイズの単粒子の運動を細胞質溶液内で可視化計測することを目標に研究を行っている。細胞質での粒子混雑、局所閉じ込め、細胞質流動、遷移的な粒子間相互作用などが、蛋白質~オルガネラサイズの細胞内粒子の運動に与える効果の実態を顕微鏡下で直視することを目指している。多数粒子の平均運動を取り扱う従来の細胞質内粒子運動の計測結果間には矛盾があり、単一粒子運動の直接観察が必要とされている。3次元・高速な細胞質内運動計測は挑戦的であるが、細胞内反応は基本的に粒子の拡散・衝突に依存しており、生物学として避けられない課題である。細胞構造・細胞環境の複雑性のため、細胞内粒子の運動は単純なブラウン運動(熱拡散)からは、相当に逸脱していると予想される。そのような逸脱は、粒子間の反応キネティクスに様々な影響を与え、細胞機能に影響する可能性がある。 本年度は、運動計測法の確立を目指し、細胞内への粒子導入法の検討と、平均計測法での粒子運動評価、および高速カメラによる計測条件の最適化を行った。細胞はヒト乳癌由来の培養細胞MCF-7を用いた。蛍光色素tetramethylrhodaminを粒子内に共有結合するコロイドシリカ粒子(直径50 nm)を、電気穿孔法で細胞質へ導入することにより、細胞質内で単分散し、局所的には単純拡散運動をおこなう運動プローブとして利用できることがわかった。粒子の分散性や運動の評価は蛍光相関分光法(FCS)で行い、計測された平均運動は水の3~4倍の粘性を有する溶液内での50 nm粒子の単純拡散運動として記述できた。同様の試料で高感度カメラによる粒子観察を試みた。照明、計測条件を最適化し、現在の所、約5 msの時間分解能で単一粒子拡散運動が可視化された。静止粒子の計測から、位置精度は1 nm程度とされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から本年度は計測条件の確立を目標としていたが、現在の計測条件を外挿すると5 nmの位置精度で0.3 ms以上の時間分解能が達成できるはずであり、一方、FCSで計測された拡散係数1 um2/sから考えると0.3 msの間の移動距離は40 nm程度であるから、最終目標とするサブミクロン空間領域での運動評価は現状でも可能である。照明強度を更に上げて時間分解能あるいは位置精度を数倍向上させることもできる。計測は当初GAPDアレイを用いる予定であったが、今回の計測に特化したソフトウェア開発に手間取っており、現在は高速・高感度のCMOSカメラを使用している。このカメラでも0.3 msの時間分解能の撮像が可能である。従って、本年度の目標はほぼ達成されたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
種々の環境下における細胞内ナノ粒子運動の計測と解析を行う。MCF-7細胞はheregulin投与によって分化し、短期的には大きな形態変化と運動性の向上、長期的には細胞内に脂質滴を蓄えるなど細胞質環境が動的に変化する。細胞内局所環境の計測に適した細胞である。この実験系で、以下の計測を行う。 細胞質の有効粘度計測:従来報告された細胞質の粘度は、プローブおよび計測法によって全く異なる。粒子サイズや粒子表面の電荷などを変化させて、有効粘度の表面依存性を測る。 拡散運動のアノマリー:粒子運動に影響をおよぼす種々の要因は異なった時間・空間スケールを持つため、粒子の拡散運動は抑制性の異常拡散になると予想されているが、従来のFCS計測結果は、わずか2成分の自由拡散で近似できてしまう。FCSよりも長距離・長時間の計測が可能な単一粒子計測で、異常拡散性の検証を行う。 遷移的結合:従来観察されてきた同一サイズプローブ間の側方拡散係数の違いは、表面の性質に依存した遷移的な非特異結合を予想させる。単一粒子の運動軌跡から遷移的な拡散係数変化を検出し、遷移的結合のキネティクス解析を行う。 細胞構造と拡散運動:仮足や細胞核内など微小領域中の拡散は、表面効果により、バルクの拡散とは異なっている可能性がある。微小領域ごとの粒子運動を計測し、微小環境における分子間相互作用に対する示唆を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗に伴い、消耗品の購入に際して予算額との差異が生じたため、旅費からの流用をおこない、結果として軽微な差額が生じた。 研究推進のための試薬・器具など消耗品購入に宛てる予定である。
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Research Products
(6 results)