2013 Fiscal Year Research-status Report
膜マイクロマシニング技術を用いた胚様体自動培養システム
Project/Area Number |
25600054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池内 真志 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (90377820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 義孝 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 研究員 (20425705)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / 再生医学 / 幹細胞 / 胚様体 / MEMS |
Research Abstract |
幹細胞を目的とする組織の細胞に分化誘導するには,胚様体と呼ばれる細胞の3次元凝集塊を形成させる必要がある.従来,胚様体形成にはハンギングドロップ法という,手作業による煩雑な操作が要求された.そのため,分化誘導や組織形成過程を網羅的に解析することは難しかった.本研究では,独自に開発した膜マイクロマシニング技術を用いて,胚様体を自動的に大量生産・個別操作できるシステムを開発することを目的としている.本年度は,インキュベータ機能を内蔵し,100個の胚様体形成用マイクロウェルを持つ,手のひらサイズのデバイスを開発した.その特長は以下の3点である. 1)100個の均一な胚様体を同時に作製可能.ウェルのサイズが等しいため,細胞懸濁液の導入により各ウェルへの播種細胞数は一定となり,均一なサイズの胚様体が形成される. 2)10本の独立した流路を有するため,同条件で培養した胚様体に最大10種の異なる試薬の導入実験を行うことが可能. 3)流路と圧力駆動ラインを1本ずつ選択することで,任意の胚様体を選択的に回収することが可能. このプロトタイプ装置を用いて,ヒトiPS細胞の胚様体を100個作製することを実証した.さらに,本装置は培養部分が透過観察可能なように設計されているため,通常の顕微鏡に本装置を設置することで,胚様体形成過程のライブイメージングにも成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた,プロトタイプシステムの開発と,それを用いたヒトiPS細胞の胚様体自動培養は,ほぼ予定通り達成することができた.また,作製した胚様体の評価として,形状測定及び,内部細胞の生死判定までは達成したが,各種マーカーの抗体染色とRT-PCRによる評価は未だ完了していない.一方、当初,次年度以降に計画していた,インキュベータ機能の搭載については,計画を前倒しで本年度にプロトタイプを完成し,実際に胚様体が培養できることも示した.以上により,計画は概ね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
1)分化誘導した胚様体の分化状態を抗体染色像から定量的に判別し,良好な分化状態の胚様体を選択的に回収するシステムの開発 胚様体の幹細胞への分化は,alpha-fetoprotein,albuminなどの複数の抗体で蛍光染色し,画像上の蛍光強度により分化の程度を評価する.一般に,分化誘導は成功率数%の確率的プロセスであるため,画像センサで取得した,各胚様体の染色像の蛍光強度を定量的に評価し,目的の分化レベルに到達した胚様体を自動的に判断し,選択的に回収する画像認識システムを開発する. (2)薄膜内流路を通じた液性因子による,胚様体の肝組織への分化誘導を実証 薄膜内に埋め込まれた流路を通じて,複数の分化誘導剤,誘導刺激を用いて,胚様体から肝細胞への分化誘導が可能かどうかを検証する.従来の培養皿での二次元的な培養状態 での分化誘導とは,因子の作用度合いや,投入するタイミングが異なる可能性が大きい.よって,既報のプロトコルをベースに,本システムの特徴を活かして,1チップ上で同時に複数の条件で分化誘導を行い,段階的に最適条件を絞り込む.最終的に,(1)のシステムと組み合わせて,胚様体から肝組織への分化誘導のプロトコルを確立する.
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