2014 Fiscal Year Research-status Report
造血幹細胞発生機構解明のためのマイクロデバイスの開発
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25600065
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 香枝 日本女子大学, 理学部, 准教授 (40373310)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ES細胞 / 血液細胞 / マイクロ流体デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
血液細胞の源となる造血幹細胞は、マウスでは胎生10.5日目ごろより背側大動脈腹側血管腔から発生する。近年、ゼブラフィッシュなどを使った実験により血流による物理刺激が造血幹細胞発生を促すことが示唆され注目を集めている。この機構を解明するには、マイクロ流体デバイスを用いる実験系が最適であると着想した。本研究では、マイクロ流体デバイス内に背側大動脈に相当する細胞を培養し、送液培養で細胞にシアストレスを与えることで、造血幹細胞の発生へのシアストレスの影響を明らかにすることを目的とする。当該年度では、Nakanoらにより確立されたOP9システムを用いて、マウスES細胞を血液細胞に分化させた。最初にフィーダー細胞として用いるストロマ細胞株であるOP9細胞をマイクロデバイス内での培養法を確立した。マイクロ流路内で血液細胞発生の観察をする。マイクロ流路内にOP9細胞をフィーダー細胞として培養し、その上に分化誘導をしたES細胞を一定量播種し共培養する。培地を静置条件で与えるもの、送液培養条件で与えるものをそれぞれ用意し、3日目以降に造血幹細胞の発生の有無を観察した。発生した細胞は、マーカー分子であるCD41を免疫染色することで造血幹細胞か否か確かめた。発生した血液細胞のすべてが染まるわけではなかったが、一部の細胞が染色できていることを確認できた。灌流培養の速度を変え、発生した血液細胞の数との関係を調べたところ、静置培養に近い条件よりも早い条件の場合のほうが発生した血液細胞数のほうが多かった。一方、、シアストレスに応じて発生すると考えられる一酸化窒素NOと血液細胞の発生との関係を調べるために、L-NAME(NOS阻害剤)を加えた実験も行った。阻害剤が入っているときのほうが産生数は少なくなり、これまでマウスやゼブラフィッシュで得られた結果と同様の結果を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培地の送液、およびシアストレスによる一酸化窒素は、発生する血液細胞数に影響を与えるという先行研究の傾向が、実際、私たちが開発したマイクロ流体デバイス内でも起こりうることを示した。また、免疫染色により、マーカー分子であるCD41の発現も見られたことから、信憑性の高い結果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
送液の速度を変えて、実際のマウス血流に近づけた系を実現し、また、人工的にNOを発生する試薬等も使用して先行研究で知られている現象がマイクロ流路内でどこまで再現できるのか検討する。さらに、細胞の応答を調べるために、NOのイメージング試薬なども使用する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、腹側に関わる因子を含む培地と背側に関わる因子を含む培地、どちらも含まない培地の三層流を作り、マイクロ流路内に背側と腹側の培養条件を再現する予定であったが、共同研究先からいただいたES細胞は微量なため、多くの条件を試すことが出来ず、したがって、予定した実験を行うことができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
三層流デバイスを作製し、腹側、背側の条件を持つデバイスの開発に使用する。
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