2013 Fiscal Year Research-status Report
Bi(Fe,Co)O3エピタキシャル極薄膜の巨大磁化および分極の解明
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25600067
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永沼 博 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60434023)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マルチフェロイクス / BiFeO3 / 巨大自発分極 / 電気磁気効果 / 極薄膜 / エピタキシャル / ペロブスカイト / BiCoO3 |
Research Abstract |
平成25年度はSrTiO3(100)基板上にBiFeO3をエピタキシャル成長させ、その構造の対称性について種々の方法により詳細に調べた。その結果、従来は単斜晶構造とX線をもちいた逆格子回折により同定されていたBiFeO3試料が、種々の方位からの透過型電子線回折実験のパターン解析により、菱面体晶構造であることが明らかとなった。巨大自発分極は結晶の対称性に大きく起因しているため、本研究により新たに理解された結晶の対称性は、今後の研究課題の進捗に大きな影響を与えるだけでなく、他の研究者にとっても有意義な情報となる。本件は11月に米国で開催される国際会議にて発表予定である。また、界面に誘起される磁性を理解するために放射光施設をもちいた中性子回折および磁気円二色性測定の予備実験を開始した。現在、試料サイズおよび検出感度などの改善を行い、次年度の界面磁気解明のための準備がほぼ完了した状況にある。将来の電界駆動型磁気メモリを念頭に平成25年度はスピン分極率が100%のLaSrMnO3(LSMO)電極作製の最適条件を決定した。LSMOはSrTiO3(100)基板上にr.f.マグネトロンスパッタ法により作製し、製膜時の酸素ガス割合が結晶構造、組成比、キュリー温度に影響を与えることが明らかとなった。酸素ガス割合の増加と共にキュリー温度は増加し、室温付近で飽和する傾向にあった。その後、酸素雰囲気環境下で熱処理すると室温以上にキュリー温度が増加することがわかった。さらに、LSMO上にBiFeO3を製膜したところヘテロエピタキシャル成長させることに成功した。LSMOとBiFeO3では界面磁気異方性が誘起されている可能性があるため、平成26年度は中性子回折および磁気円二色性により詳細な磁気構造について明らかにする計画にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度はBiFeO3に実験を集約したが、おおむねすべての実験が計画通り達成した。 界面での強誘電性においては、自発分極の起源となる結晶の対称性について従来にはない手法により明らかにした。磁気特性においては、界面磁性を明らかにできる強力な手段である界面反射型中性子回折および磁気円二色性測定をBiFeO3系の試料で予備実験を開始した。さらに、SrTiO3だけでなくハーフメタルのLSMOとのヘテロ接合の作製に成功し、界面磁性について検討する試料作製は完了した。 平成26年度はBiFeO3と並行したBi(Fe,Co)O3についても同様に実験を進め、よく知られたBiFeO3を物性基準(コントロール材料)としてBi(Fe,Co)O3の巨大自発分極と磁性の起源について明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は広く研究が進められているBiFeO3をもちいて実験環境の準備を進めてきた。平成26年度は材料をBi(Fe,Co)O3に変更して、平成25年度の実験データをもとに巨大自発分極の起源等について解明する計画にある。 一方、研究計画書のなかには中性子回折実験は含まれていなかったが、研究成果を広く公知した結果、興味を持って頂き、測定の機械を与えてくださったことから、平成26年度の研究には新たに中性子実験も加えることとした。 現在のところ研究遂行にあたり課題はない。
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Research Products
(5 results)