2014 Fiscal Year Research-status Report
強相関電子系材料におけるプラズモニックマテリアルの機能創成と外場制御
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25600073
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 裕章 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80397752)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 表面プラズモン / 酸化物 / 強相関 / モット相転移 / 中赤外 / メモリー効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、強相関電子系材料であるVO2ナノドット構造体における表面プラズモン共鳴の顕微赤外分光、及び3次元電磁界シミュレータに基づく理論的考察を実施した。10μmの空間分解能を有する顕微赤外ユニットを用いて、10ナノドット程度の光学応答の計測に成功した。また、そのプラズモン共鳴の光学応答の温度依存性は、昨年度(H25年度)におけるファーフィールド分光計測の結果と一致した。この結果は、顕微赤外分光を適用することで、酸化物プラズモニックマテリアルの光学応答を局所的な観点から評価することができることを示した。 実験的結果の妥当性を検討するために、有限差分時間領域(FDTD)法を用いた電磁界計算を行った。電磁界計算結果は、実験的結果を再現することに成功し、実験結果の正当性を確認した。また、実験的・理論的考察は、VO2ナノ構造から表面プラズモン共鳴のメカニズムの解明にも寄与した。VO2は、プラズマ端エネルギーの近傍に、3d電子準位から伝導帯に光学励起する電子間遷移(inter-band transition)が存在する。その光エネルギー遷移は、VO2の表面プラズモン共鳴を著しく抑制(damping)させることが見出された。故に、表面プラズモン共鳴の吸収エネルギーが、プラズマ端エネルギーから徐々に遠ざかるに従いプラズモン共鳴は強くなる傾向を示した。この描像は従来の貴金属材料と類似した振る舞いであることが分かった。つまり、試料における電子バンド構造は、プラズモン共鳴励起に重要な影響を与える。この物理的起源を明らかにすることによって、VO2ナノドット構造体から良質なプラズモニック応答を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(H25年度)及び2年目(H26年度)において、VO2におけるナノドット構造体の形成、及びその光学的性質を解明した。VO2ナノドット構造体は、ナノインプリントリソグラフィー技術を用いることで、200 nmのドットサイズまで加工することが可能になった。酸化物材料におけるナノ加工は金属や化合物半導体と比較して難しい傾向にある。故に、本研究期間内において、200 nmサイズの酸化物ナノ構造の作成技術の確立は重要であった。更に、有限差分時間領域(FDTD)法による3次元電磁界計算の実施も、VO2における表面プラズモン共鳴の光学励起メカニズムの理解に重要な役割を果たした。特に、ナノドット構造体における電磁界分布のイメージングは、光励起に伴う表面プラズモン共鳴が生み出す局所電磁場の把握に十分に役に立った。上記の成果は、来年度に実施する表面プラズモンの熱場制御の理解に寄与する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(H27年度)は、VO2のプラズモニック機能の熱場制御とその光学応答を検討する。昨年度(H25)は、VO2の2次元ナノドットアレイ構造において、明瞭な表面プラズモン共鳴を観測し、その光学的性質の解明及びモット転移との関連性を実施した(2015年度:論文投稿)。本年度は、VO2ナノドット間の距離を人工制御することで、ナノドット間の近接場及び遠接場相互作用を調査することで、VO2からの表面プラズモン共鳴の高性能化を目指す。過去の研究結果から、VO2は電子間遷移の伴うプラズモン共鳴のダンピング因子が存在し、高品質なプラズモン励起が妨げられている。一般的に、遠接場相互作用(far-field interaction)は、プラズモンダンピングをナノ構造の配列制御に基づいて抑制させることが可能である。故に、ナノドット構造の2次元配列を上手く制御することで、高い品質を有するプラズモン共鳴を実現する。ナノドットの構造配列において、3次元電磁界シミュレータを上手く活用して最適な構造制御を理論的に抽出し、実験的に検証していく。
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Causes of Carryover |
本研究は、強相関電子材料のプラズモニック機能と近接場制御を実施する予定としていた。初年度に酸化物材料のナノ加工を行い、プラズモニック応答の実験的な観測に成功し、2年目、電磁界計算を用いた理論的考察を行った結果、本研究の目的であるプラズモニック機能と近接場制御に関する新たな知見を得た。現在、電磁界計算による実証に向けた最適な実験条件の選定下であり、来年度への本事業の延長の必要性がでてきた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、プラズモニック機能と近接場制御の観測に向けた最適なナノ構造体のサイズ設計を電磁界計算に基づいて実施している。故に、未使用額の使用目的は、ナノ加工用の消耗品(ナノインプリント)に必要な石英モールドへの作成費用として60万円を計上し、研究成果の論文発表費として15万円を計上する。更に、共同研究先(阪大)への出張費、および研究成果の国内学会での発表に際しての出張費として15万円を計上する。
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Research Products
(10 results)