2015 Fiscal Year Annual Research Report
磁気熱量効果測定のための高精度磁場中示差走査熱量計の開発
Project/Area Number |
25600077
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
和田 裕文 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80191831)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 磁気熱量効果 / 示差走査熱量計 / 一次相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁場による磁性体の温度変化やエントロピー変化を磁気熱量効果という.磁気熱量効果の測定は比熱を測定する方法や磁化測定によって熱力学関係式から磁気エントロピー変化を求める方法などがあるが,潜熱や熱ヒステリシスをもつ一次転移の場合は正しく評価するのが難しい.本研究では示差走査熱量系(DSC)を用いて磁気熱量効果を測定する装置を試作する. 当初の計画案では周囲を真空断熱制御する方式を考えていたが,断熱にするよりも試料容器の周りに何重にも輻射シールドを入れてゆっくり昇温するほうがきれいなベースラインになることを知り,昨年度までにその方式で測定する装置を製作し,ゼロ磁場でのDSCの測定が可能であることを実証した.さらに本来の目標である一次転移を示す(MnFeRu)2PSi化合物についても測定を行いDSCピークを確認した. 今年度はまず標準物質の測定を行い,横軸の温度と縦軸のDSCシグナルのキャリブレーションを行った.そして(MnFeRu)2PSi化合物のゼロ磁場におけるDSC曲線を求めた.この物質はピークが大きいので,非常にきれいなDSC曲線が得られている.その測定精度は市販のDSCで測定した結果と同程度である. しかし最終目的が磁場中でDSCを測定し,ゼロ磁場の結果との差をとることなので,そのためにはもう少しベースラインを安定させる必要があると考え,内部の構造を少し変えた.こうして超伝導マグネットに挿入して測定する装置は完成したが,本年度キャンパス移転があったため,磁場中での測定が予定よりも遅れてしまった.加えて温度コントローラが故障したため,全体を室温付近に保つことが困難で,現在温度コントローラの修理を待っているところである.最終的には磁気熱量効果は得られなかったものの,ゼロ磁場の測定に成功するなどDSCのノウハウも得てきたので近いうちの磁気熱量効果も測定できるものと考えている.
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Research Products
(4 results)