2013 Fiscal Year Research-status Report
界面素過程の非線形性に起因する結晶成長の自発成長振動-宇宙実験による検証-
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25600081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 義純 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20113623)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 結晶成長 / 微小重力 / 生物物理 |
Research Abstract |
微小重力環境において、微量の不凍糖タンパク質(AFGP)を含む過冷却水から成長する氷結晶の成長速度を干渉計により精密に測定した。実験は、国際宇宙ステーション「きぼう」において実施されている。 宇宙実験で使う実験装置打ち上げ(2013年8月6日)後に予定通り開始された。しかしながら、実験開始直後に発生した「きぼう」システムの不具合のため実験が中断し、新しいケーブルの打ち上げ等の対策をとった結果、2013年11月末から実験が開始された。予定より遅れたため、約30回の実験を実施した後に実験が中断し、2014年1月末に実験が再開したが、約10回の実験実施後に再び不具合が発生し、現在中断中である。本年度中に実施できた実験回数は、約40回で当初予定の40%の消化率に留まった。 しかしながら、前半40回の実験で当初予定した反射干渉縞画像が約10回の実験で観察できた。これらのデータ解析は、本年度開発した画像処理ソフトを活用して実施された。その結果、氷のベーサル界面の成長速度が成長時間に対して一様ではなく、周期的な変動を示すことが明らかになった。宇宙実験では、熱対流などの擾乱の効果が完全に排除されているので、この周期変動は氷結晶の自励的振動成長を観察できたことを意味する。すなわち、結晶の成長速度の振動現象を、初めて実測により確認できた。さらに、振動の発生機構として、氷ベーサル界面へのAFGP分子の吸着量と結晶成長に伴う潜熱の発生が相互作用するというモデルの検討を開始している。 この成果は、極めて重要なものであり、速報としてすでに3月に開催された第14回氷の物理と化学国際会議において報告した。 なお、宇宙実験は2014年4月に再開され、残された約60回の実験を実施する予定である。すべての実験は、2014年6月初めに終了するが、取得済みのデータの解析は継続して実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、国際宇宙ステーションの微小重力環境を利用して取得される氷結晶の成長のその場観察画像を詳細に解析し、氷結晶の自励的振動成長を検出することであった。宇宙実験そのものは、いくつかのトラブルに見舞われて予定よりもかなり遅れているが、これまでに得られた宇宙実験データを解析し、すでに結晶成長速度が振動することを確認した。さらに、これまで得られたデータでは、すべての場合に振動成長が観察されている。 さらに、ベーサル底面での成長速度は、AFGPの効果により抑制ではなくかえって促進されることも明らかになっている。氷プリズム面の成長は、AFGPの効果により抑制されることがすでに明らかになっているが、これとは全く反対の効果を示した。すなわち、AFGPの機能は、氷ベーサル面とプリズム面では全く逆の機能を示すことも明らかになっている。 以上の成果により、本研究課題はすでに当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年4月から再開される宇宙実験では、さらに様々な温度条件での結晶成長のその場観察映像が取得されると期待される。これらのデータは、取得後直ちに解析が行われ、振動周期や振幅などの温度依存性まで明らかになると期待される。 この結果をもとに、振動成長の発生するしくみを明らかにするためのモデルの構築も並行して実施する。成長速度に対する不純物効果は、通常は成長速度を抑制する方向に作用すると考えられ、これをベースとしたモデルもすでに提案されている。しかしながら、本研究で得られている氷ベーサル面の成長は、不純物であるAFGP分子の効果により、速度が増加することが明らかになっている。すなわち、従来の不純物による成長抑制をベースとするモデルでは、説明できない。新たなモデルの構築が必要であり、不純物効果に成長速度の促進と抑制を含む統一的なモデルを提案できる可能性も出てきた。 今後、この様な統一モデルの提案に成功すれば、当初予定以上の成果となることが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際宇宙ステーション「きぼう」における実験の開始が、「きぼう」側のシステムの不具合のために予定より大幅に遅れており、平成25年度末においても実験が終了していない。このため、本研究課題の実施も大幅に遅れたため、次年度使用額が生じた。宇宙実験は、平成26年4月から再開され、6月上旬までに終了する予定であり、本研究課題の実施も加速する予定である。 宇宙実験の進行に合わせて、地上での参照実験を実施する予定である。このために必要な消耗品の購入に充てる。さらに、宇宙実験のスケジュールの遅れに伴い、成果発表の予定も遅れていたが、26年度に論文の執筆や国際・国内会議での発表等を実施する予定であり、このための経費としても使用する。
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Research Products
(2 results)