2014 Fiscal Year Research-status Report
界面素過程の非線形性に起因する結晶成長の自発成長振動-宇宙実験による検証-
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25600081
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 義純 北海道大学, 低温科学研究所, 特任教授 (20113623)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 氷結晶 / 結晶成長 / 微小重力 / 不純物効果 / 不凍糖タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際宇宙ステーションの「きぼう」において実施した不凍糖タンパク質水溶液中での氷結晶自由成長実験を、平成26年6月末に終了した。この実験は当初は平成25年5月頃には終了予定であったが、実験装置打ち上げ後に発生した宇宙ステーションのシステム不具合などにより、実験終了が大幅に遅延した。遅れはあったものの、実験計画はほぼ完全に達成された。 本実験では、新たに開発した反射型マイケルソン干渉顕微鏡により、氷のベーサル面の成長速度を測定することを目的とした。氷と水の界面の光反射係数は、ガラスの表面のおよそ1/500しかないため、通常の光学系では反射干渉縞を取得できない。新たに開発したシステムにより、このような低反射係数界面での成長速度測定が、初めて可能になった。 この実験では、氷のベーサル面の成長速度が不凍糖タンパク質の効果により、数倍から10倍近くも促進されることが示された。不純物分子による成長速度への影響は、通常成長抑制に作用すると考えらており、この結果は従来知られていない新たな知見である。また、本実験では成長速度の時間に対する変化も詳細に測定することができる。その結果、すべての実験において、ベーサル面の成長速度が周期的に変動する、すなわち振動成長することが明らかになった。さらに、速度の変化は、時間に対して連続的に変化するのではなく、デルタ関数的に急激に変化することも示された。 これらの結果は、従来知られていないまったく新しい知見であり、対流などの擾乱が完全に排除された微小重力環境において初めて明らかにされた成果である。実験の終了時期が遅れたため、26年度中に得られた実験データの解析作業を実施し、成果については随時国際学会等で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験装置を打ち上げた直後に、国際宇宙ステーション「きぼう」側のシステム不具合が発生したため、実験の終了時期が10か月ほど遅延した。したがって、全体のスケジュールが遅れ気味であるため、おおむね順調と判断した。しかしながら、これまでに得られている研究成果は、宇宙における微小重力環境において初めて見出された新たな現象をが含まれており、当初計画以上の成果があがりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
宇宙実験の終了時期が大幅に遅延したため、当初の研究終了予定の平成26年度末までに計画終了に至らなかった。しかし、実験結果の解析が26年度末にはほぼ終了しており、その内容については国際会議等で随時報告してきたが、最終的な論文の執筆が平成27年度にずれ込んだ。このため、平成27年度には、論文の発表、国際会議等での最終的な報告を行う予定である。 また、本実験の成果を説明するための。新たな数理モデルの構築を行う必要性が生じた。すでに26年度中から議論を開始しているが、モデルの完成を目指し、今後も継続する予定である。
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Causes of Carryover |
国際宇宙ステーション「きぼう」での宇宙実験の実施が、予期しない装置の不具合などにより、当初計画よりも10か月近く延期となった。これに伴ないデータ解析作業等も遅れが生じた。このため、当初計画の平成26年度末には、研究終了に至らなかった。このため、研究期間の延長、および繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の早い時期に論文の投稿を予定しており、その論文の英文校閲や投稿料として使用する予定である。また、ギリシャで開催される国際会議(22nd ELGRA Symposium and General Assembly)、および京都で開催される国際会議(International Symposium on Physical Sciences in Space ( ISPS-6) )に参加し研究成果の発表を行う予定で、このための経費としても活用する。
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