2013 Fiscal Year Research-status Report
グラフェンナノ細孔分子ゲートデバイスによるタンパク質単分子検出
Project/Area Number |
25600096
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
荻野 俊郎 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (70361871)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 固体表面 / グラフェン / タンパク質分子 |
Research Abstract |
グラフェンは原子一層でありながら安定に架橋構造を作ることができ、さらに単層膜であっても原子・分子に対して完全な不透過性を備えている。したがって、マイクロメーターの小孔をもつ基板上に貼り合わせたグラフェン単層膜を加工することにより、ナノスケールの細孔(ナノポア)を施した膜を形成することが可能である。このナノポア径とグラフェン表面・ナノポアエッジの電荷状態を制御できれば、各種のタンパク質の形状や電荷による選別が可能になる。こうした観点から、タンパク質単分子制御を可能とするグラフェンナノポアの形成を目的とした。 25年度は、マイクロメーター径の小孔を配置したSiO2/Si基板を用いて、グラフェンの貼り合せと金属微粒子を用いた穴あけを試みた。グラフェンはCu基板上の化学気相成長によって形成し、ポリマーへ転写したのちCu膜を除去し、最後に基板への貼り合わせとポリマー除去を行って形成した。加工には、Ag微粒子を用いて酸化性雰囲気中でグラフェンを気化する手法を用いた。この方法により、マイクロからナノスケールの穴あけが実現した。しかし、この方法は偶然に頼っており、所定の位置に穴あけができないため、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた加工を新たに開拓した。AFM探針にAgをコートし、穴あけする位置で電圧印加することによりAg微粒子をグラフェン上に形成できることを確認した。さらに、電圧印加時間を調整することにより、架橋グラフェン上に任意のサイズのナノポアを開けることが可能なことを実証した。一方、ナノポア通過のイオン電流を計測するシステムの構築を開始し、イオン電流測定が可能なことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は、架橋グラフェン表面にナノポアを形成し、タンパク質単分子通過をナノポアによって制御するデバイスへ向けた各種の要素技術を立ち上げることを目標としている。その目標へ向けては、グラフェンのナノポア形状の制御、イオン電流の測定、タンパク質分子通過の条件設定、通過タンパク質の検出等、多くの要素技術が必要になる。 25年度は、その中でも最も中心課題となる架橋グラフェンの加工技術開拓を優先した。その結果、AgコートAFMを用い、探針への電圧印加によりAg微粒子を形成し、Agを触媒とするグラフェンと雰囲気中の酸素との反応により気化させるというプロセスの有効性を見出した。この方法は、電圧印加時間などの制御パラメータが多く加工サイズの制御範囲が広いため、ナノポア形成に有効である。したがって、グラフェン加工については非常に大きな成果があったと認められる。しかし、タンパク質一分子の検出へ向けた分子ゲートデバイスの開拓においては、デバイス特性の計測技術等の面で計画からやや遅れが生じている。 これらを合わせると、グラフェン加工においては計画以上の達成度であり、研究論文リストに挙げてあるように、インパクトファクターの高い論文誌を含めて多数の論文が出版されている。しかし、分子ゲートデバイスにおいて予定通り進まなかった項目もあり計画を上回る達成度とまでは言えないので、総合して計画通りの成果とする。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はグラフェンの高い空間分解能に着目し、ナノスケール細孔(ナノポア)を有する分子ゲートデバイスを実現し、タンパク質の単分子検出を行う基盤技術を確立することを目的としている。その実現にあたってキーとなる技術は、細孔を架橋するグラフェンの形成とナノポアの形成、単分子通過を制御するグラフェン表面とタンパク質の相互作用の制御である。 平成26年度の重点項目として、架橋グラフェンへの任意のサイズのナノポア形成の継続と、グラフェン薄膜へのタンパク質吸着制御を取り上げる。分子ゲートデバイス本体についても、別の研究計画と並行して進める。ナノポア形成制御については、原子間力顕微鏡(AFM)を用いる加工が最も有力である。一般に、AFM加工は実験的には便利でもスループットが低く実用的ではないが、ナノポアデバイスにおいては一個のデバイスで一個しか穴あけを必要とせず、再現性が得られるようになれば実用性も備えている。本計画では、AFM加工を中心に、電子線描画等の手段も併せて、制御性の高い加工を実現する。AFM加工では、触媒金属微粒子の種類、探針への印可電圧、温度などの加工パラメータの最適化とともに、加工したナノポアの評価技術についても透過型電子顕微鏡等に手段を拡大する。グラフェン表面とタンパク質との相互作用制御に関しては、グラフェンの脂質膜や自己組織化単分子膜による修飾により、分子通過効率の良いナノポア作製の基盤技術を立ち上げる。作製したナノポアのイオン電流を測定し、デバイスの基本構造の特性を評価する。最後に、タンパク質分子の通過検出を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額は85,000円であり、無理に使い切らなかったための誤差分である。 計画の中心をなすグラフェン成長の化学気相成長で用いるガス(メタンガス)等の消耗品に充てる。
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