2014 Fiscal Year Research-status Report
触媒制御のための電圧印加型MIS/MIM構造デバイスを目指した脱離研究
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25600100
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
服部 賢 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (00222216)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脱離 / ホットキャリア / MOS構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はMOS-Siにおける酸化膜の質が電圧印加脱離を左右する傾向を見出した。 昨年度までに超高真空中にて、1) p-type Si基板の酸化膜上に金属層(Fe)を数nm蒸着し(パーコレーション電気伝導の確認)、2) 次に室温及び低温(130 K)でこの系にN2Oガスを暴露し、3) 更に表面金属層と裏面Si電極(オーミック)間にゲート電圧Vgを印加すると、4) Vgが負電圧の時(Si中の多数キャリアの正孔が金属層に移動する方向)にH2、CO、CO2などが脱離した(正電圧の時は脱離しなかった)ことを報告してきた。これは硫酸過水など溶液処理により作製された酸化膜が中心であった。 本年度、市販の熱酸化膜で同様な試料作製、及び測定を繰り返し行ったところ、脱離は観測されなかった。リーク電流を絶縁破壊により増大(1 nA以下→10 μA程度)させても同様であった。しかし、熱酸化膜を一旦、酸素プラズマ処理したところ、負電圧Vgにて脱離が観察された(リーク電流10 μA程度)。これらのことから、酸化膜中の欠陥や酸化膜表面の終端などの調整が、電圧印加脱離に効いてくるファクターの一つであることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も、引き続きMOS-Siの作製条件の最適化を目標にしていた。今回得られた、酸化膜の質が電圧印加脱離を左右するという知見は大きい。 デバイスシミュレーターによる計算では、正極・負極のVgを印加した際の酸化膜界面付近のSi中の電子・正孔濃度や、バンド端から金属フェルミ準位までのエネルギー差には大きな違いはなかった。従って、Vg負電圧の時のみ脱離が観測される現象は、ホットな正孔が酸化膜中をトンネルする際、何らかの要因で効率よくそのエネルギーを金属層に吸着したガス系に伝え脱離反応を誘起していることを意味している。 ここで当然、酸化膜中の欠陥準位がその過程で大きく寄与しているものと予想され、このパートは今後の指針の一つとなる。今回、最適化条件の一つとして酸化膜質に注視できたことは、最適化がおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、引き続き作製条件の最適化を行う。今回、酸化膜質が一つの制御すべき要因であることが判明した。そこで、酸素プラズマ処理の条件、あるいは電子線照射処理を行うなど熱酸化膜の処理条件を変える、更には、液中酸化処理での調整を行ったり、また他種絶縁層で比較するなど、この酸化膜質依存性を詳しく調べる方針とする。更に、注入キャリアーの種類とメカニズムに重要なヒントを与える、基板種類(p型、n型)と印加電圧極性の関係を明確にする方針である。 昨年度報告したガス反応(Fe + N2O → FeNx + FeOyと残留COなどとの反応)による脱離は一種の還元反応であり、正孔注入が直接寄与しているとは考えにくく、FeクラスターなどにMieプラズモン等を誘起している可能性もある。従って、メカニズム解明のアプローチの一つとして、プラズモンからの発光測定も検討する。
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Causes of Carryover |
年度終了1-2カ月前に測定用PCが故障したため、年度内に新規に測定用PCを購入する予定であった。しかし、短期で入手可能なPC(Windowsバージョン)が、測定に用いている計測用ハードウェア、ソフトウェアに対応していないことが判明したため、年度内の購入ができず次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
測定に用いている計測用ハードウェア、ソフトウェアに対応可能なPC(古いWindowsバージョン)を購入、または、新規のWindowsバージョンに対応するよう計測システムを見直し、必要な物品の購入を計画する。
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Research Products
(3 results)