2013 Fiscal Year Research-status Report
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25600118
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田邉 孝純 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (40393805)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 微小光共振器 |
Research Abstract |
我々はレーザ溶融ペデスタル法を用いた結晶成長技術を応用して,サファイアによるウィスパリングギャラリーモード微小光共振器を作製した.結晶の引き上げ速度を成長途中で変化させることで,軸方向の光閉じ込め構造の形成に成功した.C軸方向に引き上げることで,6角形の断面をもつ共振器を形成した.テーパ光ファイバを共振器の側壁に近接させることで,光を共振器に導入し透過スペクトルを測定した結果,作製した共振器はQ値8500であることがわかった. そこで,次にQ値の制限要因を明らかにするためにモード解析を行った.その結果,多角形共振器においては,2つの性質の異なるモード(quasi-WGMとperturbed-WGM)が存在し,それらの2つのモード間の結合がQ値の低下に影響を及ぼしていることを明らかにした.具体的には高Q値であるperturbed-WGMモードから低Q値のquasi-WGMへ光が結合するために,結果的にperturbed-WGMにおいても高Q値が得られにくい.多角形状ウィスパリングギャラリーモード共振器はZnO等他の材料でも作製されており,ここで得られた知見は多くの共振器に共通して適用できる. 解析の結果,共振器の断面形状の操作が必要不可欠であることが明らかとなったので,我々は結晶軸を傾けて結晶成長を行うことで,より円形に近い形状を得ることを試みた.その結果軸を25~47度の間に傾けることで,比較的円形に近い共振器が作製できることを示した.作製した共振器はX線回折を行い,共振器の単結晶性が優れていることを確認した.次に光学特性を実施し,Q値が16000まで向上させたことを明らかにした. 以上まとめると,本年度はレーザ溶融ペデスタル法による結晶共振器の作製,多角形状ウィスパリングギャラリーモード共振器のモード解析,成長軸制御による断面形状制御をおこない,Q値16000を実現した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はレーザ溶融ペデスタル法による結晶共振器の作製,多角形状ウィスパリングギャラリーモード共振器のモード解析,成長軸制御による断面形状制御をおこない,Q値16000を実現した.これらの成果は査読付き学術誌2編,国際学会発表2件,国際会議発表2件にまとめられた. 当初より準WGMと摂動WGMの2つのモードの詳細な理論解析をおこなうことを本年度の目標に掲げており,予定通りこの2つのモードの詳細な解析を実施した.その結果,モード間結合が高Q値の制限要素であることを明らかにし,多角形状ウィスパリングギャラリーモード共振器においては本質的に高Q値が得られにくいことを初めて明らかにした.この結果はPhys Rev. Aにまとめられている. 本質的に断面形状を円形にすることが必要であることが分かったので,それを実現するために,結晶軸を傾けて成長させることに取り組んだ.既にプリヒーティング法を用いて成長させると円形になることを本年度の初めに報告しており(Appl. Phys. Lett.),それが結晶軸の成長方向の影響であることを明らかにした.結晶方向を変えて成長させることで,当初Q値8500であったところを16000まで向上させることに成功した. 以上当初予定通りに研究が進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
角を丸めるということは,部分的に結晶配向を乱すことであり,結晶性の低下が光学特性に何かしらに影響を与えることが懸念される.我々は本素子を将来的に電気光学変調や第2次高調波発生等,結晶の配向が重要となる研究にも展開したいと考えており,このトレードオフの検討は重要である. そこで,本年度には得られた共振器のX 線回折の解析結果を詳細に解析することで,Q値と結晶性の関係を明らかにする.特に結晶成長においては表面の温度勾配の影響によって結晶性が低下する可能性があり,光学特性に影響を与える可能性があるために,その影響について調査する. また,形状は結晶成長技術で作製することを基本としつつも,内部残留応力や前述の表面の結晶粒を取り除くために,表面のレーザプロセスや研磨技術と組み合わせることで,Q値を向上させることを並行して検討する.これらの加工技術と組み合わせることで,Q値100万オーダの結晶材料によるウィスパリングギャラリーモード共振器の作製を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
結晶成長装置の改造に必要な光学素子の購入において,既存設備からの流用が可能であったために費用支出を圧縮できた.その一方で,結晶共振器の測定において安定的に光学特性を評価するためには,装置を改造する必要があり,追加で光学素子を購入する必要があることが明らかとなった.翌年度に改造を行うため,本年度の支出を抑える必要があった. 本年度中に光学特性測定を安定して測定可能にするために,装置の改造を行う.そのために,光学部品(消耗品)の購入が必要となる.当初計画していた支出に加えて,レンズ,レンズホルダー,ビームスプリッターの支出を追加する.
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Research Products
(9 results)