2013 Fiscal Year Research-status Report
周期構造による超音波・表面弾性波の制御とエネルギー輸送・収穫デバイスの設計
Project/Area Number |
25600132
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
鶴田 健二 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (00304329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤森 和博 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (70314705)
石川 篤 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (90585994)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超音波 / フォノニック結晶 / 表面弾性波 / テラヘルツ波 / 圧電性薄膜 / 分子動力学 |
Research Abstract |
本研究では,弾性波の伝播制御を可能にする周期構造体“フォノニック(ソニック)結晶”の最適設計と固体表面弾性波制御構造の設計を行い,超音波・弾性波を用いた高効率のエネルギー輸送デバイスを考案し,最終的には人体中の電子機器への電力伝送などへの応用や、未踏領域のテラヘルツ波発振原理の確立と応用開拓を目指している。 平成25年度は,これまでシミュレーションで設計してきた2次元GRIN型フォノニック結晶のプロトタイプを作成し,負の屈折現象と焦点化の実証実験を行った。実験には,これまでこのようなフォノニック構造の特性解析のために我々が設計・作成してきた高効率トランスデューサを用い,測定系として,水中超音波分布を測定するためのハイドロフォンを購入,上記特性の検証を実施した。 音響レンズ効果の高効率化・広帯域化の実現のためには網羅的な設計が必要となる。また,デバイス化に向けてより軽量で人体にも影響を及ぼさない素材を用いる必要がある。これらの要件を満たすように,CADソフトと3Dプリンタによる樹脂製フォノニック構造プロトタイプ作成も行い,水集超音波実験によって負の屈折現象などについても確認した。 一方,半導体表面の周期構造によるテラヘルツ波制御への展開にむけ,大規模分子動力学シミュレーションによる構造・材料探索を開始した。具体的には,微細加工に実績のあるガリウムヒ素(GaAs)薄膜,ならびに圧電性薄膜として既に使用実績のある窒化アルミニウム(AlN)についてのシミュレーション解析を実施した。膜厚3.8nmのAlN薄膜において共振的伝搬モードが励起され,さらにその薄膜にナノスケールの周期孔構造を導入した導波路中で弾性波が閉じ込められ,それによって伝搬特性が向上することが分かり,これと圧電効果を組み合わせることによって新しいテラヘルツ波発振源が実現できる可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要に記した通り,フォノニック結晶構造の設計と水中超音波伝搬特性の数値シミュレーション,ならびにプロトタイプ作成による超音波伝搬実験の実施を行い,負の屈折現象とレンズ効果についてはほぼ計画通りに完了している。加えて,当初計画になかった小型・軽量化,設計・作成の簡便性向上にも着手できている。また,ナノスケール薄膜での弾性波デバイスの設計では薄膜全体の撓み振動モードを用いることによって,より効率よく弾性波を励振・伝搬できる可能性をシミュレーションによって見出すなど,計画以上の進展も得ることができている。 一方で,レンズ効果によるエネルギー伝送効率の定量的評価や,薄膜振動励起の効率(Q値)の評価など,最終目標であるデバイス実現に向けて重要な課題も浮き彫りになっている。これらの課題は初年度で定量的なめどをつけておきたかった項目である。 以上の状況を勘案し,上記(“概ね順調に進展”)と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
フォノニックレンズの設計と実証に関しては,まずは平成25年度に検討し切れなかったエネルギー輸送効率の問題点と改善方法を確立する。負の屈折現象を確認した実証実験において,水中超音波分布測定系に既存のレーザー光学系を組込むことにより伝搬波面を可視化し,シミュレーション結果と対応するかどうかを確かめる。並行して,周期構造の充填率分布に多階層の傾斜をつけたGRIN構造を基本とするレンズの設計とその小型化を,前年度に引き続き3Dプリンタなどを活用して解析・実証し,シミュレーションから予測される音圧分布や音響エネルギー回収効率からのずれがあれば,測定機器と測定系の整合性を含めてその要因を同定し,可能な限り高いエネルギー収穫効率の正確な評価を目指す。特に,前述の波面可視化技術により,シミュレーション→プロトタイプ作成→水中実験・可視化→シミュレーション→・・・のサイクルを繰り返して最適構造を決定する。これらを通して,本格的モジュール化へ向けたデータ蓄積ならびに測定装置の更正を進める。同時に,例えば産業用電気機器・発電機などの環境振動発信源からのエネルギー収穫を行うためのフォノニック導波路およびそれらの組み合わせとモジュール化によるエナージーハーベスティングシステムの概念設計を行う。 半導体・圧電薄膜上のミクロンスケールの周期構造に対する 時間領域差分法(ないしは有限要素法)シミュレーションも実施し,テラヘルツ波発生原理の定量的検証,加えてそれらの理論設計を基に,収束イオンビーム加工装置によるプロトタイプ作成・実測も試みる。 上述の計画を実現するために,光学系測定系(レンズなど)の少額消耗品,ならびに音圧分布解析用のソフトウエアの購入に研究費を充てる。加えて,最終年度であるので成果発表を積極的に行うための(国際会議を含めた)学会参加旅費にも予算を充てる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度当初に計画した物品費の内,水中超音波測定用のハイドロフォンが当初計画より安い機種で十分な性能が期待できることが分かり,その変更に伴って光学系測定装置用や樹脂製フォノニック構造作製のための少額消耗品の購入に充て,その残った一部を次年度の同様な消耗品購入予算に回すこととしたため。 上記の通り,少額の光学系機器および樹脂製フォノニック構造作製のための少額消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)