2013 Fiscal Year Research-status Report
超高強度レーザー誘起パルス表面波の金属細線伝送による表面プラズマ電子長距離加速
Project/Area Number |
25600138
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阪部 周二 京都大学, 化学研究所, 教授 (50153903)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レーザー加速 / 高強度フェムト秒レーザー / レーザープラズマ / 電子線源 / プラズマ波 |
Research Abstract |
新たなレーザープラズマ電子加速方式の提案の可能性を探るための要素を検証する。超高強度極短パルスレーザーと金属細線との相互作用により高強度短パルス表面電磁波を発生し、これを細線に沿って伝搬させることにより細線表面に表面プラズマ波を誘起し、このプラズマ波により電子を細線方向に長距離加速することを提案する。この方式の可能性を示すための要素物理の検証として、①細線を伝送するパルス表面電磁波の存在の有無の検証、②プラズマ波の観察を目標としている。 代表者らは、高強度短パルスレーザーと薄膜との相互作用により放射する電子線を詳細に調べた。その結果、金属薄膜を用いた場合、電子が面方向に強く放射することを見いだした。この結果を元に、金属細線とレーザーの相互作用により発する電子は細線方向に放射すると考えた。実験の結果、電子は細線方向に指向性よく放射した。電子は明らかに細線方向に誘導されている。この実験結果を解釈するために、電子の軌道計算を行った。金属細線渡って有限の減衰時間をもつ線電荷を仮定した場合、放射特性が再現された。加速された電子が細線の作る電場により引き寄せられ、細線方向に運動する。問題はこの計算に用いた線電荷の作る電場に相当するものがどのように生成されるかであり、これを明らかにすることが当該年度の課題である。二つの解釈が考えられる。①レーザーによる細線の帯電と②レーザーによる表面電磁波の生成である。本年度は間接的な測定を実施した。様々な、ターゲット系により放射電子特性を調べた。 金属細線を空隙をおいて直列に配置した場合(第1の細線の空隙と反対の端にレーザーを照射する)、空隙があるにも関わらず、第2の細線においても電子が誘導されることを観察した。これは、①の可能性はないと結論付けられるものである。薄膜と細線の組み合わせでも、薄膜により生成加速した電子が細線に誘導されることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザーと金属細線の相互作用において、電子が細線方向に誘導されていることは実験的に確実に実証された。また、メートル級の細線においても誘導が観測された。この誘導がどのような物理で生じるのかを明らかにするために、間接的な方法であるが、標的金属細線を空隙を設けて直列に配置したり、薄膜と細線を配置した標的系で照射実験を行った。その結果、レーザーが直接照射される標的から細線が離れているにも関わらず、電子が細線方向に誘導されることが明らかとなった。よって、電子の誘導力は、レーザーによる細線の帯電ではないと結論付けることができた。これは、高強度レーザープラズマ物理において意義のある知見である。しかし、これはまだあくまで間接的な考察に留まっているので、次年度では金属細線周辺の電場を直接的に測定することに挑戦する。 本研究の結果では、レーザーと固体標的との相互作用では単に電子が発生加速されるだけではなく、周辺に大きな電場が誘起されることを現象的に示しており、様々な放射線の複合的な利用の可能性のあることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 金属細線周辺に生成されていると考えられる高速電磁場をフェムト秒電子パルス偏向法で直接的に測定する。代表者らが現在実施している「高強度レーザー生成電子を用いた超高速電子線回折法の開発」において開発した短パルス電子線を用いる。この電子線は300fsのパルス幅を有しており、このパルスをプローブとして、金属細線近傍に直交させる。金属細線近傍を電磁波パルスが通過する瞬間にプローブ電子ビームが横切るとプローブ電子線は偏向する。この偏向量を捉えて、表面電磁波パルスの有無や強度を評価する。電子線回折装置の試料位置に金属細線を電子線に対して直交するように配置する。代表者と研究協力者の井上俊介が実施する。次に、(2) 金属板では既に観察されているナノ周期構造を金属細線にて確認する。フェムト秒低強度レーザーを金属細線に照射し、照射面を電子顕微鏡にあて観察する。周期構造の特性(格子間隔など)を調べる。特に斜入射照射により周期構造形成の有無を確認する。 (3) 金属細線端に高強度レーザーを照射し、細線表面全体に渡っての周期構造の有無や形態を電子顕微鏡観察する。(4) 金属細線方向に放射する電子のエネルギーのレーザー強度依存性を調べる。また、細線の長さ依存性を調べ、極短細線から放射される電子のエネルギーと比して、長細線の場合に電子エネルギーの増加があるかを確認する。(2)(3)は連携研究者の橋田昌樹と研究協力者の宮坂泰弘(京都大学理学研究科博士課程・学振特別研究員)が担当する。(4)は代表者と研究協力者の井上俊介が分担する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行にあたり必要な光学素子(消耗品)を購入したが,さらに必要な光学素子の購入には経費不足であるので,次年度使用とした. 本年度予算を合わせてレーザー光学素子などの消耗品を購入する.
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