2014 Fiscal Year Research-status Report
最新光子検出器とチェレンコフ放射を利用した超高分解能粒子時間速度検出器の開発
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25600141
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福田 光順 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50218939)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | チェレンコフ光 / 高時間分解能 / 飛行時間検出器 / 粒子識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,まず昨年度製作した全反射型チェレンコフ飛行時間検出器の改良を行った。ラジエーターである高屈折率ガラス(オハラ(株)製,n = 1.89; 厚さ 1mm)と高時間分解能光電子増倍管の受光面との接着の仕方に工夫を凝らした。接着剤は三菱ガス化学(株)に協力を仰ぎ,同社製の高屈折率プラスチック(n = 1.69–1.74)の重合前の液体状のものを用いて,加熱重合を行うことで固化させた。 この改良した検出器に対し,今年度は昨年度に比べてさらにチェレンコフ放射の光子量の多い条件でテスト測定を行った。実験は放射線医学総合研究所の重イオンシンクロトロン施設HIMACにおいて,核子当たり420 MeV まで加速された微弱 132Xe ビームを用いて行った。その結果,最高時間分解能として,昨年度を大きく上回る σ = 5.4 ps を達成することに成功した。初期の目標分解能が σ ≦ 10 ps であることを考えると,既に大きく目標以上の結果を記録できている。本研究で得られたこの時間分解能は,重イオンビームに対する時間分解能としては世界最高記録となる。この結果,ビームに対する速度分解能は,飛行距離わずか 1m ほどでδβ/β ~ 0.1 % と極めて良い値が達成できる。これにより,重イオンビームに対する核種識別能力の飛躍的な向上が期待できる。 ただし,信号処理電子回路の設定条件などの最適化がまだ完全ではなく,さらに性能改善の余地が残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
屈折率の大きなラジエーターから通常のガラスでできている光電子増倍管の光入射窓へのチェレンコフ光の透過率を高めるため,いろいろな工夫と試行錯誤を重ねた。また,重イオンビームの種類や加速エネルギーは1回の実験でほぼ1種類しか選択できず,1回2晩程度の実験が年に2回だけ可能なので,問題点や調整すべき箇所の適切なフィードバックに時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 得られた世界最高記録の性能がどのような条件に依存するか,下記の点を得られているデータから抽出し,さらなる性能向上を目指す。 ・ビームの原子番号依存性,・ビームのエネルギー依存性,・ラジエーターの種類依存性, ・光電子増倍化の種類依存性, ・信号処理系の設定への依存性 2. 得られた結果をまとめ,論文発表を行うとともに,積極的に国際学会等で発表する。 3. 得られた高時間分解能を利用して,実際の粒子識別検出器として使用してみる。 4. 大面積化など,汎用性を高める改良・改造をすすめる。
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Causes of Carryover |
研究計画がやや遅れているため,光子検出器やラジエーター,関連部品などの調達が遅れている。そのため,研究成果をまとめて,学会等で発表するための旅費使用も遅れている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・別の種類の光電子増倍管・ラジエーターを調達する。 ・論文発表,学会での成果発表のための費用・旅費として使用する。 ・汎用化のための改造費用として使用する。
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