2013 Fiscal Year Research-status Report
石英製屈折レンズを用いる放射光マイクロ回折によるInGaN層のピンポイント評価
Project/Area Number |
25600151
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
木村 滋 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主席研究員 (50360821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 康彦 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (30416375)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射光 / X線回折 / 蛍光X線分析 / マイクロビーム / マイクロ回折 |
Research Abstract |
本研究の目的は,既存のマイクロ回折システムに新規に開発する石英製屈折レンズを導入することにより,In蛍光X線マッピング機能を追加し,(1-100)面InGaN層の格子緩和とIn組成ゆらぎの相関関係をサブミクロンの空間分解能でピンポイントに解明することである. この目的を達成するため,本年度は以下の項目を実施した. 1.30 keVの放射光X線を集光できる石英製屈折レンズの新規設計および作製 屈折レンズの場合,焦点距離fは,f = R/(2Nδ)であり,Rは中心部の曲率半径,Nはレンズ数である.この式は,曲率半径Rを小さくするか,レンズ数Nを多くすれば,焦点距離が短くなることを示しており,同じ焦点距離の屈折レンズを作製する場合でもRとNとには複数の解があることが分かる.そこで,レンズの開口を100 μm に固定し,100×100 μm2の放射光ビームをサブミクロンに集光することを目指し,ビームの垂直方向,及び水平方向を,それぞれ,焦点距離200 mmと100 mmのレンズで集光する屈折レンズを作製した.これらレンズの作製にあたって,曲率半径Rとレンズ数Nについて,微細加工に最適な組み合わせを探索することを目的とし,3種類の条件で作製した. 2.屈折レンズのマイクロ回折計への導入 上記屈折レンズを高分解能マイクロ回折システムに組み込み,レンズ位置を正確に調整するために必要となるXYZ軸移動と回転が制御可能なステージを作製した.実際に,高分解能マイクロ回折システムに取り付けて,良好に動作することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度中に実施予定の項目,1. 石英製屈折レンズの作製,2. 屈折レンズのマイクロ回折計への導入,の内,2.の一部,「集光ビームサイズとフォトンフラックス測定」が出来なかった. これは,1.の設計に時間がかかり,納入時期が予定より遅れたため,SPring-8での実験に間に合わなかったことが理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,平成25年度に未実施の「集光ビームサイズとフォトンフラックス測定」を早急に実施するとともに,開発したシステムの有効性を示すため,(1-100)面InGaN/GaNヘテロ構造試料を用い,In蛍光X線マッピングと局所逆格子マップ測定をサブミクロン空間分解能で実施する.これにより,In組成揺らぎと格子緩和の相関関係を探索する. 我々は,無極性面である(1-100)面InGaN/GaNヘテロ構造において,界面でのミスフィット転位の発生に伴って,InGaN層に,<11-20>方向と<-1-120>方向の異なった2種の格子面傾斜が存在し,それぞれ10~数10 μm程度の大きさで分布することを放射光マイクロ回折により解明した .しかし,このような格子面傾斜が10~数10 μm程度の大きさで分布する理由は明らかになっていない.Inの局所的な増加は歪エネルギーを増大させるため,In組成揺らぎは格子緩和に大きな影響を与えると考えられている.そこで,本研究では,格子面傾斜の分布とIn組成揺らぎとの相関の解明を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実施を予定していたSPring-8を利用した「集光ビームサイズとフォトンフラックス測定」が出来なかったため,その他に計上していたSPring-8の消耗費実費負担分の費用が使用できなかったこと,および,旅費が予定より若干少ない費用で済んだため,次年度使用額が生じた. その他については,平成25年度に実施する予定だったSPring-8実験を平成26年度に追加して実施する費用として使用する.旅費は,平成26年度に予定していた研究発表以外に,研究協力者との打ち合わせのための旅費として使用する.
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