2015 Fiscal Year Research-status Report
構造力学と連続体力学を繋ぐメタモデリング理論の構築と有限要素法への応用
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25600153
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 宗朗 東京大学, 地震研究所, 教授 (00219205)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 連続体力学 / 構造力学 / 解析力学 / ソリッド要素 / 構造要素 / 有限要素法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主要な成果であるメタモデリング理論は,似てはいるものの厳密には異なるとされてきた構造モデルと連続体モデルに対し,二つのモデルの間に数理的な精緻化-単純化関係と厳密-近似関係が成立することを立証することで構築されている.二つのモデルの基盤となる構造力学理論と連続体力学理論に立ち戻り,物理的仮定と数理的近似を峻別することで,立証がされている.なお,物理的仮定は実験で検証できる事項であるが,数理的近似とは元来の物理問題に対応した数理問題を別の数理問題に変換させることである.数理的近似をされた物理問題の解は,元の数理問題の近似解となることが,連続体力学と構造力学の理解を難しくしてきた.しかし,1次元ないし2次元の構造モデルの問題は,3次元の連続体モデルか,幾何形状の単純化と変位関数の関数形の近似によって,純粋に数理操作のみで導出することができる. メタモデリング理論に基づくと,連続体モデルと構造モデルの精緻化-単純化関係と厳密-近似関係が整理される.一つの構造物に対し,精緻な連続体モデルを使うと厳密な解が得られるとともに,単純化された構造モデルを使うと,構造モデルの正解が,連続体モデルの厳密解の近似となるのである.構造力学と連続体力学の関係に関しては膨大な研究が蓄積されてきたが,二つの理論とその帰結である二つのモデルに対し,精緻化-単純化関係と厳密-近似関係が成立することを厳密に示したものは本研究が初めてである.この点で本研究は独創的である.得られた厳密-近似関係の適用範囲は広く,同一の構造物に対して,厳密解を与える連続体モデルと整合するさまざまな構造モデル(最も単純な質点系モデル,ファイバーモデル,シェル要素モデル等)が構築することを可能とした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタモデリング理論は構築し,メタモデリング理論に基づく求解の高速化を進めている.構造モデルと比べ,連続体モデルは自由度が大きく,必要な数値計算量も大きいが,数値計算の多くは線形マトリクス方程式を解くという求解に使われている.近似解である構造モデルの解を使うことで,このマトリクス方程式の近似解を得ることができれば,共役勾配法に基づく連続体モデルの求解が効率化されることが期待される.構造モデルの解を低次元のベクトルとして表す場合,連続体モデルの解は高次元のベクトルとなる.この低次元のベクトルを高次元のベクトルに適切に写像することが,求解の効率化の方針である.上記のアイディアに基づき求解の効率化を進めており,構造モデルの解を連続体モデルの解に写像する方法も考案されている.実例を増やすことを進めている. 上記とは別に,新たに,メタモデリング理論そのものの拡張の可能性が発見されたことは,当初の計画を超えた成果であると考えている.メタモデリング理論は連続体のラグランジュアンを対象とするものであるが,連続体のラグランジュアンから連続体のハミルトニアンが導出されたのである.連続体のハミルトニアンは時間微分と空間微分を含む正準方程式を支配方程式とするという特徴を持つ.通常の時間微分しか含まない正準方程式とは異なる.通常のハミルトニアンは時間積分をするだけで陽的に解が求まるが,連続体のハミルトニアンは時間積分と空間積分を組み合わせることで陽的に解を求める可能性を秘めている.また,ラグランジュアンとは異なり,ハミルトニアンを使うと,エネルギー等の保存量も完全に保存された解が求まる.このハミルトニアンを使った求解の理論を構築することが重要である.
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Strategy for Future Research Activity |
メタモデリング理論の研究を推進する方策として,二つの方向を考えている.一つはメタモデリング理論の実用化である.構造モデルが建設産業で愛用される理由は,実験で計測された接合部の特性を直接取り込める点にある.その一方で実験には直接間接のコストがかかり,特に,構造物の縮小実験や部材の実験は規模も大きく,実験コスト削減は長年の課題である.連続体モデルを使った数値シミュレーションが実験の代替となることが期待されてきたが,基の構造力学理論と連続体力学理論に違いがあり,当然,構造モデルと連続体モデルは似て非なるものと認識されてきたため,数値シミュレーションの実験代替としての利用は進んでいない.構造モデルと連続体モデルの精緻化-単純化関係と厳密-近似関係をメタモデリング理論が立証したため,この誤認識を正し,数値シミュレーションの実験代替としての利用を促進することが容易となった.実用化の方策は,具体的には,数値シミュレーションが実験代替となる実例を増やすことである. 方策のもう一つは連続体モデルのハミルトニアンの利用である.特に構造物の地震応答解析に関しては,時間微分と空間微分を含む正準方程式を支配方程式とするハミルトニアンを使った数値解析は未知の領域であり,エネルギー等の保存量を正しく保存できるという点で大きな可能性を秘めいていると考えられる.計算力学ないし計算科学の視点でみても,ハミルトニアンに関しては,時間微分を含む微分方程式を解くためにシンプレクティック積分が研究開発されてきた例がある.連続体のハミルトニアンの特徴は時間微分と空間微分の二つが正準方程式に含まれることであり,シンプレクティック積分はこの二つを含む微分方程式に関しても適用可能である.時間積分に限定されたシンプレクティック積分を,時間・空間積分に拡張できるよう,研究開発することは学術的にも重要であると考えている.
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Causes of Carryover |
当初,本研究が構築を目指すメタモデリング理論は,連続体力学のラグランジュアンを使うことが大前提であった.ラグランジュアンは,直接,有限要素法の定式化に利用できるからである.平成27年10月に,このラグランジュアンと等価な連続体のハミルトニアンを導出することに成功し,さらに,ハミルトニアンを使ったメタモデリング理論の拡張に取り組んでいる. ハミルトニアンを使ったメタモデリング理論に基づけば,ラグランジュアンを使った従来の定式化と全くことなる有限要素法や,数値解析手法を定式化できる可能性がある.具遺体的な数値解析手法の候補は,時間と空間微分が陽に記述される連続体のハミルトニアンを使ったシンプレクティック積分である. 以上,メタモデリング理論のハミルトニアンを使う拡張と,ハミルトニアンを使う有効な数値解析手の考案のため,1年の延長を予定している.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
延長した研究期間で行う主要な作業は,メタモデリング理論の拡張と新しい数値解析手法の考案という定式化である.これに付随して,定式化の検証に必要な準解析的な数値計算も作業として行う. 助成金は,情報収集のための旅費と,準解析的な数値計算を行うための消耗品の購入に使う予定である.
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Research Products
(13 results)