2013 Fiscal Year Research-status Report
反シンプレクティック正則対合を持つ実K3曲面とその退化
Project/Area Number |
25610001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
齋藤 幸子 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40260400)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | K3曲面 / エンリケス曲面 / 反シンプレクティック対合 / 退化 / 周期領域 |
Research Abstract |
(1) 反シンプレクティック正則対合を持つ実K3曲面のモジュライ空間の研究における重要な例として,S=U+<-2>型の場合について,実Hirzebruch曲面 RF_4上の1つ2重点を持つanti-bicanonical 曲線の実isotopy型の分類に応用する研究を継続した.実isotopy型の分類の完成には至らなかったが,2013年8月までの結果を論文にまとめ,まずweb上でarXivに公表し,学術雑誌に投稿した.10月に査読者からのレポートを受け取り,修正すべき箇所の指摘を受けた.特に,その指摘に基づき再考した結果,実isotopy型をRF_4上の非特異なanti-bicanonical曲線のいくつかのタイプのdegenerations(退化)から得ようとしたアプローチに関して,1つのタイプのdegenerationが不要な事が判明した.また,2重点が非退化であるか否かの判定のため,反シンプレクティック正則対合を持つ実K3曲面のmarkingにおいてS=U+<-2>の分解を固定すべきことも指摘された.それに基づき,markingと周期領域の見直しを行った.2014年3月に特に集中的に修正作業を行い,4月初めに同じ学術雑誌に(新たに得られた結果を含めて)再投稿することが出来た. (2) 2013年8月に「K3曲面・エンリケス曲面ワークショップ」を札幌で開催し,連携研究者のO氏(東京理科大),T氏(東京電機大),さらに,I氏(名古屋大)に,K3曲面の非ハウスドルフな変形族や,K3曲面への自己同型の作用に関するSmith完全系列,対合付きK3格子に関するNikulinの理論などに関する講義をして頂き,自身の研究に役立てることが出来た. (3) 2013年6月に京大数理研で「モジュライ理論の発展」研究集会に参加し,K3曲面・エンリケス曲面に関する最新の結果および基礎講義を聴いた.Nikulin氏と研究連絡を行った. (4) 2013年4月から6月まで,北大で「twisted K3 surfaces」に関する講義を受け,新知識を獲得した.しかし,2013年度中に自身の研究に応用するまでには至っていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実Hirzebruch曲面 RF_4上の1つ2重点を持つanti-bicanonical 曲線の実isotopy型の分類の完成を目指し,比較的強い制限までは得たが,それらが実現できることを証明できておらず,分類の完成に至っていない.非特異曲線からの退化による構成についても,その退化自体が実現可能なのかどうか証明できていない.それに関するDegtyarev, Itenberg, Kharlamovの類似の研究も,証明が詳細に書かれておらず,参考にならない.さらに他の文献を調べる必要がある.また,「非特異曲線からの退化」と「格子から得られるコクセター図形」の対応を調べたいが,格子から得られるコクセター図形に関する知識の習得が遅れている.授業時間中および入試業務の時期に研究時間を取り難いことも遅れている理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
実isotopy型の実現可能性を証明するためには,現在私が考えている実K3曲面の周期領域の各連結成分に,必ずある実K3曲面が対応していることを証明するという方法と,非特異曲線の分類結果(既知)を用いて,それらからの退化による構成により証明する方法が考えられる.そのためには,そのような退化自体の実現可能性を証明しなければならない.それらに取り組む.2013年度中に論文の投稿を通して,編集者とのやりとり(査読者レポートの受け取り)から,解決方法を見出しつつあり,「trigonal曲線の構成」という方法もあることを教えられた.Degtyarev, Itenberg, Kharlamovの類似の研究(先行研究)の分析も進める.「非特異曲線からの退化」と「格子から得られるコクセター図形」の対応を調べるために,必要な知識を習得する.特に,「1パラメーター変形で,対合付き格子がどう変化するか」,つまり,Picard-Lefschetz定理のタイプの結果を見出すことが肝要と思われる.
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