2014 Fiscal Year Research-status Report
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25610022
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
村上 順 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90157751)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子群 / 表現論 / 結び目理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,量子群の量子化に対応するパラメータが1の冪根の場合について,その半単純でない表現に注目してその性質を調べようというものである.これまでにも,半単純でない表現についてのテンソル積の分解の様子などは研究されてきたが,本研究では,結び目や絡み目の量子不変量との関係を調べることで,テンソル積に現れる表現のうち,幾何学的に意味のある部分とそうでない部分とを見分け,半単純でない表現のテンソル積に関する構造のうち,より本質的な部分を取り出すことで,古典的なリー環やリー群からは分からない新たな構造を見つけ出し,対応する位相的量子場の理論の構成などを通じて,数学ばかりでなく素粒子論などにも新たな手法をもたらすことを目的としている. ますは SL_2 に対応する量子群についての研究を行い,量子不変量との対応から,半単純でない表現のラジカルの部分がパラメーターに関する微分と深く関係していて,これを用いてパラメーターの一般の場合からラジカルの部分を導く手法を開発した.この手法を用いて,ラジカルの部分に対応する結び目や絡み目の不変量について調べ、双曲体積などの幾何学的情報がこのラジカルの部分に含まれていることを見出した.また,この手法は、多様体中の結び目に関する量子不変量についても使うことができ,多様体中の結び目の量子不変量とその補空間の双曲体積との関係を明らかにすることができた. さらに,量子不変量を量子 R 行列から構成するだけでなく,量子 6j 記号から構成することにより,対応する位相的量子場の理論の構成に向けて準備を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最も基本的な SL_2 に対応する量子群に対しては,半単純でない表現のラジカルの部分に対応する量子不変量の構成や,この不変量の双曲体積との関係などもかなりわかってきており,また,量子 6j 記号との関係を調べることで,テンソル積に関する構造についても,どの部分が本質的なのかをかなり明らかにすることができており,概ね当初期待していた成果を得ることができている. 同様の研究を階数が2以上のリー環に対応する量子群で行うことも大変意味のあることであり,特にテンソル積の分解に関する本質的な部分が,素粒子の構成原理とも深く関わるという可能性もあるため,是非とも進めなければいけない研究であるのだが,現在のところは SL_2 に関する研究に終始しており,階数の高い場合については,最終年度,あるいはそれ以降に渡る研究として進めることとしたい.
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Strategy for Future Research Activity |
最も基本的な SL_2 に対応する量子群については半単純でない表現に対応するラジカルの様子をかなり明らかにすることができており,現在はこれを生かして量子 6j 記号の構成とそれに対応する位相的量子場の理論の構成を行っている.この研究を続けて完成させるととともに,今後は階数が2以上のリー環,すなわち, SL_n や SO_n, SP_n といったものに対応する量子群について,量子化のパラメーターが1の冪根の場合の半単純でない表現のラジカルについて調べてていく.特に階数2の場合が非常に興味深く,A_2 型、B_2 型、G_2 型に対応する量子群についてそのテンソル積の分解に関する幾何的に重要な部分というのを見つけ出して新たな圏論的な構造を構成する. 半単純でない表現に対する圏論的構成は既になされたものもあるが,ここでの構成は,従来の構成法では見捨てられてしまう部分を逆に取り出すような構成になるはずのものである.
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Causes of Carryover |
韓国からの研究者の招聘旅費として用意しておいたが,最終的には宿舎の費用のみしか使わなかったため,残りを繰り越すこととなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究発表のための旅費に加える.
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