2013 Fiscal Year Research-status Report
心室細動における自発的スパイラル波の生成メカニズムの解明
Project/Area Number |
25610036
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
二宮 広和 明治大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90251610)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲垣 正司 独立行政法人国立循環器病研究センター, その他部局等, その他 (80359273)
上山 大信 明治大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20304389)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | パターン形成 / 心室細動 / 反応拡散系 |
Research Abstract |
心臓は,興奮性細胞の集まりであり,興奮性媒体上の伝播現象と考えることができる.心室細動は,電位の伝播がスパイラル波となることによって発生すると考えられている.本研究課題では,スパイラル波の自発的生成メカニズムの解明を行う.まず,2次元領域上で障害物によるスパイラル形成メカニズムを調べ,障害物の角度とスパイラル生成の関係および進行スポット解との関係を明らかにした.これにより単一波が自発的にスパイラル生成するメカニズムの基礎がわかった. 場の不均一性が原因となるスパイラル波の形成に関して,BZ反応を用いた実験および数理モデルを用いた数値実験の双方のアプローチにより研究を行った.不均一性がもたらすある特徴的な構造が,興奮波の進行に関して一方向性をもたらし,そのことが原因でスパイラル波が生成する事が示唆された. 本年度は、ウサギのLangendorff潅流心標本において心内膜側を凍結凝固することによって2次元的媒質を作り、さらに凍結凝固法により障害物を左心室中央に作成した.心尖部から期外刺激ペーシンングを行い,興奮伝播の光学的活動電位マッピングを行った.円形の障害物を作成した場合には,心室細動様のスパイラル波の安定した誘発は困難であり,時に障害物の周囲を安定して旋回する興奮波が誘発された.矩形状の障害物を作成した場合は,連結期の短い期外刺激によりスパイラル波が誘発された.また、Langendorff潅流心標本上では障害物に対する平面波の角度を正確にコントロールすることが困難であり,障害物と平面波の角度がスパイラル波の形成に及ぼす影響を調査するに至らなかった. なお,モデリングおよび数値計算の担当する研究協力者として鈴野浩大(明治大学)を加えた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にある4つのテーマの達成度について述べる.テーマ1「tipの自発的形成メカニズム」およびテーマ2「障害物の形状とスパイラル波の発生の関係」については,2次元均質媒質下の単一波において解決でき,計画通り進んでいる.FHN方程式の特異極限として得られる自由境界問題を用いて,進行スポット解の構成に成功した.これを用いて,障害物の形状(端点の角度)とtipの自発的生成の関係を解析的に調べ,tip生成条件を求めた.現在,論文を執筆中である.tipが生成されてもスパイラル波になるとは限らない.tipをもつ波が障害物にぶつかるとtipは消滅する.障害物はtipを生成する役割も果たすが,消滅される役割も担っている.複数の障害物の場合,不均質媒質の場合,3次元領域の場合,複数波の場合については平成26年度に考察する予定である. テーマ3「ミクロな障害物のマクロな影響」は計画通り平成26年度に実施予定であったため,平成25年度は実施していない. テーマ4「実験によるミクロな状態変化のマクロな影響」については,BZ反応の実験を行い,理論との比較を行った.
|
Strategy for Future Research Activity |
障害物の形状に関する条件を求め,得られた諸条件が実際の心筋では,どのようなものに対応するのかを調べる.そのため,障害物の形状や配置とスパイラル形成の関係,連続モデルと離散モデルの関係,ミクロな状態がマクロなスパイラル波生成に与える影響などを調べていく.特に3次元における興奮波の運動解析には困難が予想される.スクロール波の運動を扱う際,渦度方程式などを用いることも検討していく. また,モデルを離散化してスパイラル生成条件の変化を調べる.スパイラル生成条件も離散化に対応して変化するが,離散化の大きさに応じては連続モデルと異なる条件が出てくることが期待される.離散化のサイズと障害物形状に関するtip生成条件の関係を調べることで連続モデルと離散モデルの関係を明らかにする. また,実際の心室細動において重要な問題は,体への影響を少なくながら,どのように除細動するかという問題である.理論的な解析から逆問題的に制御への発展には,多くの数値計算が必要と予想される.このような数値計算と培養心筋細胞シート上実験を踏まえながら進めていく.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外研究者を訪問して議論する予定であったが,都合が合わず平成25年度中に行えなかったため. 平成26年度中にパリ南大学を訪問する予定である.
|