2014 Fiscal Year Research-status Report
小型衛星用広視野X線偏光装置の開発と系統的GRB偏光測定
Project/Area Number |
25610042
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷森 達 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10179856)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 硬X線偏光測定 / ガンマ線バースト / パルサー / ジェット / ガスTPC / 光電効果 / コンプトン散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガンマ線バースト(GRB)は宇宙最大の爆発現象であり、赤外線からγ線まで多波長で研究されているが、その爆発機構はまだ不明である。その解明に不可欠なのがX線γ線偏光度である。偏光は磁場構造、加速現場の幾何学情報を唯一与えてくれる。X、γ線偏光は宇宙物理全般で粒子加速解明に重要な磁場情報を与える観測量で有る が、その測定は大変困難であり、現在までに数例の精度の低い観測結果のみである。この申請では当初測定効率のより5-30keVの光電効果電子の散乱方向測定を考えた。しかし光電効果電子を用いた場合偏光度測定の精度を決めるModulation値が0.2-0.3と小さく、統計をあげる必要があるが系統誤差を抑えることが難しくなる。一方コンプトン散乱の計測ではこのM値は0.5以上が期待でき、100keV以上では宇宙背景放射が急激に減少し、高いS/Nが得られる可能性がある。この研究の基礎となっった電子飛跡検出コンプトンカメラ(ETCC)は100keV以上で高い雑音除去と6strという広視野をもつGRB検出では最適な装置である。特にETCCは内が立方体という単純な構造であり大きなM値が予想される。すでに30cm角大型ETCCが気球実験用にできている。さらに25,26年度でその感度の飛躍的改善が可能となり極域周回気球実験で20個以上のGRB観測が可能なことが判明した。そのためより早い段階で高精度GRB偏光観測が確実に行える手段であることがわかり、このETCCでのGRB偏光測定の可能性を放射光、さらには線源を用いた実験により検証することを目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
25年度シュミレーションで得られたM値0.5以上(100-500keV)を実証するためにSP8放射光施設の140keV硬X線ビームを90度散乱させ100%偏光光を作り30cmETCCに入射、M値の計測実験を行った。このような大型装置でシミュレーションどおりのM値を得ることはかなり困難と予想していたがETCCの雑音除去能力により実験値も0.6と、シミュレーションと大変一致する結果を得た。これは装置の理解が大変善くできていること、ETCCの持つ高い偏光測定を実証した。さらに1MBのBa(30keV)を用い、そのコンプトン散乱による50%偏光度の180keV硬X線を作り、実験室での偏光測定を実施、非常にX線強度が弱く、ビームも広い領域に広がり実際の宇宙環境のS/Nに近い状態で偏光測定を行った。このような悪環境での測定実験は世界でも前例がないが宇宙での性能実証には今後重要であり先駆的実験である。結果は現在解析中である
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Strategy for Future Research Activity |
弱線源を用いて高雑音環境での偏光計測法、特にイメージングによる雑音除去を完成させ、実際の宇宙環境下に近い状態でのM値の決定法を確立させる。また装置の形状によるM値の改善を行い、世界最高レベルのM値0.7が行える改良型ETCCを設計し、今後の気球実験に導入する。最終的には数年以内に南極周回気球観測による20個程度のGRBの偏光観測(感度20%程度)を実現する。
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Causes of Carryover |
今年度の予算で予定した放射光施設での200keVガンマ線ビームを利用した偏光能力測定試験の実施時期が施設側の都合がから27年1月末に割り振られ、実験が当初予定の秋から4ヶ月程度遅れた。データ解析には半年程度最低必要であるが、そのため解析の終了が27年夏になる。さらに解析結果から測定法の改善を行い、宇宙での天体観測を模擬したRIによる測定実験を行い最終性能評価を行い、申請時より確度の高い結果に発展させることを目指している。そのためには夏以後さらに4,5ヶ月程度の時間が必要となる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大量のデータを迅速に解析するための計算機とデータを保存する記憶装置を導入して解析の効率を上げる。またその後のRIを用いた最終試験のためのETCC運転の維持費および回路やガスの消耗品が必要となる。さらに世界初の好感度イメージング偏光観測が実現できたことを迅速に国内および国際学会で発表するための旅費、論文投稿費が必要となる。
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