2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25610050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 直紀 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90377961)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ニュートリノ / ボルツマン方程式 / 数値計算 |
Research Abstract |
今年度は3次元宇宙論的シミュレーションのための初期条件生成コードを開発した。標準的なゼルドビッチ近似を用いて物質の密度場および速度場を計算し、得られた速度場を粒子の速度分布関数に反映させた。 次にボルツマン方程式を宇宙膨張を取り入れた共動座標系で書き下し、さらに典型的な宇宙論的シミュレーションを想定した変数の変動区域を見積もり、計算コードの中で運動量空間での積分や時間積分など必要な部分の改訂を行った。 テスト計算もかねて、軽いニュートリノが全てダークマターである場合、すなわちホットダークマターの場合の宇宙論的計算を行い、揺らぎの成長が線形理論で期待されるものと一致することを確認した。また、初期の速度分散が実効的にゼロである場合、すなわちコールドダークマターの場合の宇宙論的計算も行い、線形成長率と整合することを確かめた。ただし、計算精度が時間刻み幅に大きく依存することが判明したため、移流方程式を解く際の特性曲線の求め方を改善し、さらに必要な計算精度を得るために時間刻みをどのくらい小さくとるべきか経験的に明らかにした。現在はニュートリノとコールドダークマターのように、大きく異なる速度分散を持つ複数の成分が混じった現実的な系の計算のためにハイブリッドコードを開発している。一つの方法として、コールド成分は高速フーリエ変換ポアソンソルバーを用いた従来の粒子法で解き、ホット成分のみその速度分布関数の積分を行う方式を採用した。両方を粒子的に取り扱う手法との比較を行った上で、ホット成分の分率を変化させた計算を多数行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宇宙論的初期条件生成コードを開発できたため、実際に標準的な宇宙モデルを採用してテスト計算を行い、計算精度の議論を深めることまでできた。線形理論予測との比較により、これまでに用いてきた1次精度の特性曲線法の難点に気づき、微小時間内での厳密解をもちいた手法に変更した。またN体-ボルツマンソルバーのハイブリッドコードを開発し、速度分散の小さい成分はN体粒子法で取り扱う方法に着手した。今年度に現実的な宇宙論計算を行うことはできたものの、成分ごとの線形理論との比較など、確認すべき事柄が多いため、揺らぎのパワースペクトルなど目標とする諸量を計算するまでにはいたっていない。これらの最終目標は研究最終年度までに十分達成できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在はニュートリノとコールドダークマターのように、速度分散が大きく異なる成分が混じった現実的な系の計算のためにハイブリッドコードを開発、テスト中である。一つの方法として、コールド成分は高速フーリエ変換ポアソンソルバーを用いた従来の粒子法で解き、ホット成分のみその速度分布関数の積分を行う方式を採用した。両方を粒子的に取り扱う手法との比較を行った上で、ホット成分の分率を変化させた計算を多数行う予定である。また、最近の宇宙観測からしばしば示唆される、温かい暗黒物質モデルの計算も行いたい。これには、これまでに開発済みの1成分ボルツマンコードをほぼそのまま使用できるはずである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費などは当初見積もりよりも少なく済んだ。また、初期条件生成コードの開発をすすめたため、今年度はハードディスク購入の必要がなかった。 大規模シミュレーションを遂行し、ハードディスク購入にあてる。
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Research Products
(2 results)