2013 Fiscal Year Research-status Report
高粘度液体中に結晶シンチレータを分散した,ニュートリノ実験用装置の開発・研究
Project/Area Number |
25610052
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸本 康宏 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (30374911)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 粘度 / 屈折率 / シンチレータ |
Research Abstract |
本年度は,CsI(Tl),CaF2(Eu)結晶を入手した.CsI(Tl)に325nmの励起光を入射し,そのシンチレーションスペクトルを測定した.その結果,520nmを中心に半値全幅で150nm程度の発光スペクトルを得た.これは文献値等を再現したものであるが,一方で,400nm付近に小さな発光中心も確認された.また,高粘度液体を6種類入手し,そのうちの2種類を,CsI(Tl)と共に屈折率を測定した.屈折率は400~800nmの間でほぼ等間隔に8点のデータを得た.CsI(Tl)の発光中心における屈折率は1.8と文献の通りであり,長波長側から短波長側に向かって緩やかに増加していることが判明した(404.7nmで1.847, 785.4nmで1.776).発光の半値全幅の両端では,屈折率が約2%変化するという結果を得た. 測定した波長領域において,高粘度液体の屈折率は液体の粘度への依存性は小さく無視できるレベル(0.01%以下)と判明した.CsI(Tl)の発光中心で1.408であり,また,波長依存性では,発光の半値全幅の両端で約1.3%だけ変化することが分かった. これらの結果は,まずシンチレーション光の領域で屈折率が特異な特性を示すことは無く,発光中心の屈折率を元に,僅かな補正を加えることで,シンチレーション光がCsI(Tl)結晶自身によって受ける影響を見積もることが出来ることを示している.これに基づくとCsI(Tl)のシンチレーション光は,結晶を1つ通り過ぎる度に(垂直入射の場合で)約3%がフレネル反射によって損失することが分かった. この結果は,CsI(Tl)結晶を多数並べると,多くのシンチレーション光が散乱することを示している.(例えば,結晶4つを透過すると22%のシンチレーション光が散乱する.) これら測定と並行して,シンチレーション光を測定するためのデータ収集系の準備を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
屈折率の測定,発光スペクトルの測定と,本研究の基礎となるデータが順調に揃った.これによると,高粘度液体の屈折率,決勝シンチレータの屈折率ともに,特異な振る舞いがなく,滑らかに変化することが確認された. ただし,高粘度液体は高粘度のものは低粘度のものと比べ,屈折率が高いというのがカタログ値であったが,カタログ値に比較して,屈折率の差が小さく,屈折率のマッチングを行うことが難しいことも分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は複数のCsI(Tl)結晶を並べ,シンチレーション光が結晶を透過する際の散乱の様子を観測し,屈折率から予測されるものと比較する. 「研究実績の概要」に示した通り,シンチレーション光が多くの結晶を透過する場合は散乱の効果が大きいことも判明しており,また高粘度といっても大きな結晶を保持する程の粘度はないので,小結晶を高粘度液体中に多数分散させるという形で,新しいシンチレータ系を開発することは難しいと予測される. その場合には,屈折率の大きく,CsI(Tl)のそれに近い液体(例えば ジヨウ化メタン 1.737)を利用し,大きな結晶を液体中に並べるというタイプのシンチレータの研究も視野にいれて,今後の研究を進める.
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