2014 Fiscal Year Annual Research Report
高粘度液体中に結晶シンチレータを分散した,ニュートリノ実験用装置の開発・研究
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25610052
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸本 康宏 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (30374911)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 結晶シンチレータ / 屈折率 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに,本研究の最も基礎的なデータ,即ち,CsI(Tl)とCaF2(Eu)結晶シンチレータの発光スペクトルと,高粘度媒体(6種)と2種類の結晶の各波長における屈折率データが揃った. この結果,高粘度媒体も結晶シンチレータもいずれもが,特異な波長依存性を持たず,従って,発光の中心波長の屈折率を元に,わずかな補正を加えることで,発光全体の影響を見積もることが出来ることが分かった.一方,非常に高粘度の媒体の屈折率が,カタログ値に比較して小さいことが判明した.このカタログ値との違いの原因を突き止めるには至らず,従って,複数種類の高粘度媒体を用いても,屈折率と完全にマッチした媒体を作成することが出来なかった.結果として,CsI(Tl)の場合,結晶1つを通過する毎に,約3%の光がフレネル反射によって損失することが分かった. 前年度から今年度にかけて,長期間,高粘度媒体中にシンチレータを入れた場合,結晶を分散して保持することが出来ず,段々と降下することが分かった.即ち,細かい結晶を分散させた系を構築する事は容易ではないことが分かった. 今年度は,前年度までの成果を元に,高粘度媒体の中に3つの短い長さの結晶を入れたものと,1つだけ長いものを入れた場合で比較した.まず,赤緑青の市販のレーザーポインターを照射し,結晶端での反射の様子を見た. 更にこの系に,外部から鉛でコリメートしたCs137のガンマ線を,3つの短い結晶の端,1つの結晶の端に照射した場合のシンチレーション光の光量を比較した.その結果,発光量に対する影響は約5%であり,予測値(約10%, 97%の三乗)よりも小さかった.この差は,系のセットアップ(光学グリスの塗布具合等)に依るものと解釈している. 本研究によって,大きな結晶を複数個を高粘度媒体に導入した系をあたかも1つの系として構築することが可能であることが分かった.
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