2014 Fiscal Year Research-status Report
ミュー粒子の異常磁気能率におけるQCD力学の格子計算方法の開拓
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25610053
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
早川 雅司 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20270556)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミュー粒子の異常磁気能率 / クォーク / QCD / 格子ゲージ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
クォークが電荷を帯びているため、光の散乱はQCDの影響を受ける。この効果がミュー粒子の異常磁気能率に及ぼす寄与、QCDによる光-光散乱振幅からの寄与、を定量的に把握することは、理論の予言値と実験値の間に現時点で伺われている”ずれ”が未知の素粒子構造に由来するか否かを判断する上で、最も重要である。 そのためには、QCDによる光-光散乱振幅による寄与を、場の量子論の第一原理、つまり、格子QCDによるシミュレーションによって計算する必要がある。 2014年度では、この寄与の一部を計算するために考案した方法の有効性を示す論文を取りまとめた。論文は Physical Review Letters に掲載されている。並行して、数値計算上より効率の高い方法についての検討も開始した。また、Mainzで開催されたミュー粒子の異常磁気能率におけるQCD補正に関するワークショップに招かれ、近年の成果、現状認識、課題、今後の到達目標に関する情報を共有してきた。議論の内容はweb上で公開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミュー粒子の異常磁気能率へのQCDによる光-光散乱振幅からの寄与を、格子ゲージ理論シミュレーションによって計算する方法の確立は、実際に数値計算を遂行して検証•実証することでしか果たせない。研究計画では、特に一部の寄与(クォークのQED相互作用がすべて同一のクォーク線上にあるファインマン図)に関して申請段階で提案した方法が失敗することも想定していたが、考案した方法の有効性を報告することができた。また、QCDによる光-光散乱振幅による寄与全体を計算する方法として手中にあるものの有効性を検証する準備(主にプログラム開発)を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度に推進すべき課題は2つに分類される。一つは、ミュー粒子の異常磁気能率へのQCDによる光-光散乱振幅からの寄与全体を計算する方法の探索である。現時点で手中にあるアイデアは、クォークが電荷を持っていることも考慮した(QCD+QED)のシミュレーションを積極的に活用するものであるが、その有効性をテストするプログラム開発等を進める。他の一つは、QCDによる光-光散乱振幅からの寄与のうちの一部分に限定して2014年度までに検討してきた方法よりも計算効率の良い方法の探索である。この副課題に関しては全く発想が異なる手法の有効性のテストと計算効率の比較を行う。具体的には、これまでの方法がクォーク部分とミュー粒子の間で交換される仮想光子のエネルギーがなるべく小さいものを選択的に計算するのに対し、別のアイデアは、散乱振幅の大きさがより大きな寄与の選択的な計算を図ろうというものである。このテストを踏まえて第一の副課題の方法の再検討も図る。
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Causes of Carryover |
成果報告のための会議に招待されたが交通費分を補う必要が見込まれ、27年度予算から10万円を前倒しで使用する手続きを行った。しかし、航空券が想定以上に高額であったため、共同研究者に参加してもらい、使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果報告のための国際会議参加旅費として使用する予定である。
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