2013 Fiscal Year Research-status Report
暗黒物質探索のための真空紫外光および近赤外光の直接検出法の確立
Project/Area Number |
25610060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寄田 浩平 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (60530590)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 暗黒物質探索 / アルゴン蛍光 / 真空紫外光 / 赤外光 |
Research Abstract |
本年度は次の3点を軸に研究を行った。 1)常温・1気圧のガスアルゴン(GAr)の赤外発光特性: 真空紫外成分(128nm)の蛍光をリファレンスに用いるため、直接感度のあるMgF2 PMT(R6836)を用いた。一方、赤外成分検出のために光電面が赤感度増強型マルチアルカリのPMT(R2228)を準備し、α線源を用いたAr蛍光信号を様々な光学フィルターを通して観測した。その結果、GAr蛍光に650nm~850nmの赤外成分が存在し、また真空紫外成分との相対光量も約50%~70%程度あることを確認することができた。さらに赤外波長に直接検出感度のあるMPPCを用いて赤外信号を確認した(ただし常温・1気圧)。 2)低温動作可能なサンプルMPPC試験: 実際にAr暗黒物質探索に使用するためには、Ar液体温度(-186℃)でも正常に動作する光検出器が必要であるが、現在、真空紫外or赤外に有感かつ低温動作可能なPMTは存在しない。そこで、低温における破損原因となる表面保護材を除去し、クエンチング抵抗の温度依存性を最小化するためにメタル抵抗に変更したサンプルMPPCを浜松ホトニクス社から提供してもらい低温試験を行ったところ、破損せずに動作し、常温⇔低温の繰返し再現性も確認できた。また波形の時定数も温度によらず40ns程度で安定していることがわかった。 3)暗黒物質探索への利用検討: 赤外光をMPPCで直接検出し、気液2相型Ar光検出器の位置分解能が改善できるかを検討した。暗黒物質探索のためには壁面での発光、内部バックグランドの除去が重要となる。そこでMPPCを検出器側面に配置し、ガス中で発生する比例蛍光中の赤外光を直接検出する方法を試みた。簡易シミュレーションとLEDを用いた実験結果によると、特に壁際での分解能が上下面PMTだけのときに比べ、相補的に改善することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたAr蛍光の赤外成分の存在を実証し、真空紫外との相対光量も測定できた。光量としては使用条件をクリアしているため、実際のDM探索への応用も検討できた。また、低温稼働可能なMPPCの試験結果からも本研究課題の第一段階が十分達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を踏まえて、赤外光の純度依存性、圧力依存性、温度依存性を系統的に調べていくことが重要である。また、発光の波形時定数やその比(早/遅)など、本格的な基礎特性を調べ上げ、ほかのDM探索実験との差別化、高感度化に役立てる必要がある。また、引き続き真空紫外光の直接検出方法やTPB塗布方法・量などの最適化を変換効率と透過率(位置分解能に重要)を考慮しながら進めていく必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度は赤外光の検出と相対光量の測定に注力したが、今後は純度・圧力・温度等の各種依存性を検証すべきだ段階である。そのための実験に関わる予算が必要となったため。 純度・圧力・温度依存性の検証のためのインフラ・測定機器を準備する必要がある。また、高純度の液体・気体アルゴンの購入も必須である。高性能の光学フィルターや低温稼働可能なPMTの購入、また開発中のMPPCの購入や多チャンネル読み出しシステムの構築など、2014年度の研究成果を充実化させるためにどれも必要な要素である。
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