2013 Fiscal Year Research-status Report
時空間波形整形超短パルス光による可変指向性THz波の発生
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25610069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉澤 雅幸 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60183993)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光物性 / パルス波形制御 / THz波発生 |
Research Abstract |
レーザーを光源とする光発生技術は近年大きな進歩を遂げており、時間的に波形整形された超短光パルスや空間的に制御された光ビームが発生されている。しかし、光パルスの時間特性と空間特性を同時に制御する試みはほとんど行われていなかった。本研究では、光位相変調器を用いて時間と空間二次元の制御を行い、その応用として指向性と周波数が自在に可変なTHz波を発生することを目的とした。 平成25年度は現有システムであるチタンサファイアレーザーシステムの超短パルス光を用いて、時空間波形整形パルスの評価光学系の製作を行った。和周波発生と光カー効果を用いた評価方法を比較した。2次の非線形光学効果である和周波発生の方が測定感度は高いが、観測される光パルスの運動量が保存される光カー効果が本研究では適切であることを明らかにした。測定領域を5mmほどに広げた場合でも十分な測定感度が得られており、光学系を最適化することで時間測定精度20 fs以下、空間分解能 10μm以下が達成されたことを参照パルスの測定により確認した。 時空間波形整形の光学系を、現有の光位相変調器を用いて構築した。まず、空間的には一次元の制御を行い光位相変調器の最適な制御条件を調べた。その結果、光位相変調器の歪み補正を改めて最適化する必要があることがわかった。評価光学系での測定結果をフィードバックすることで、目的とする時空間制御パルスの発生を行った。空間二次元の波形整形については空間一次元の波形制御から得られた字結果をもとに光学系の設計を行った。 時空間波形整形による出力パルスの特性を考慮してTHz波発生光学系の設計を開始した。すでに基本設計と部品の購入は終了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
時空間波形整形パルスの評価光学系として、光カー効果を用いた十分な精度をもつ装置の開発に成功した。空間分解能が十分に得られるかが開発の鍵となっていたが、光カー効果を用いることとCCD検出器への結像を最適化することで、回折限界に近い分解能を得ることができた。現有の光源のパルス幅が約150 fsであるため高い時間分解能は得られないが、ピーク時間の決定精度は20 fs程度となっている。非同軸光パラメトリック増幅器(NOPA)の出力である超短パルス光を用いれば10 fs以下の時間分解能も可能となる。評価光学系はリアルタイムでの測定が望まれるため、検出および解析の自動化を進めている。 時空間波形整形器としては、現有の光位相変調器を用いて空間的には一次元を制御するシステムを構築した。光位相変調器の歪み補正を最適化する必要があったため当初予定よりも開発に時間を要したが、空間位置により時間特性が異なるパルスの発生にすでに成功している。具体的には、繰り返しおよびタイミングの異なるパルス列を空間的に異なる位置に集光することができる。ただし、空間的な分離がまだ不十分であり光学系の調整が残されている。開発した評価光学系の測定結果をフィードバックすることで光位相変調器を最適に制御する方法を開発中である。 THz光の発生および計測については平成25年度中に発生を確認する予定であったが、開発がやや遅れている。開発中の時空間波形整形器の出力特性に合わせた光学系の設計はすでに終了しており、時空間波形整形器の調整が完了後に構築する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に得られた結果を基にして、空間的には一次元の時空間波形制御装置の最適化を達成する。得られた超短光パルスを用いてTHz波を発生する。発生には非線形光学結晶(ZnTe)を用いる。既に購入した自動ステージを用いて空間分解能をもつTHz波検出装置を製作し、一次元ではあるがTHz波の指向性が容易に制御できることを確認する。また、指向性制御と同時にTHz波の単色化と周波数制御が行えることも確認する。 第二段階として二次元の空間制御を可能とする時空間波形整形器を製作する。ただし、本研究では簡易型の波形整形器とする。具体的には、液晶の二次元位相変調器ではなく、位相マスクを用いた波形整形を行う。この方法では任意のパルス波形の発生はできないが、本研究の目的である三次元時空間光パルス整形器の原理実証には十分である。発生したパルス列を光位相変調器を用いた空間的に制御することにより、三次元時空間光パルス整形を達成する。光パルス特性は製作した測定装置を用いて確認する。さらに、三次元制御された光パルスにより発生したTHz波の特性を調べる。 三次元の時空間波形整形および指向性THz波発生について得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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