2014 Fiscal Year Research-status Report
非放射場と放射場を対等に扱う単一感受率による光学の理論
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25610071
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
坂野 斎 山梨大学, 総合研究部, 助教 (30260566)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 近接場光学 / 単一感受率 / 非放射場 / 誘電率 / ナノ構造 / 非線形光学応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は,通常の光である放射場と光源近くに局在する非放射場を対等に扱う理論によって誘電率・透磁率の代替を構成し,近接場光学に役立てることを目指しています.25年度は最小作用の原理に基づき非放射場と放射場を対等に扱う単一感受率の微視的表式を導出しました.26年度は,研究計画に従い,1. 先年度までの成果を国際会議で発表し,2. 微視的表式の結果をもとに実験に役立つ現象論の構成について研究を進めました.現象論の進捗が遅れ研究期間を27年度まで延長させていただきました. 1. 米国での近接場光学の国際会議(NFO-13)で研究成果の発表をしました[1];ナノ構造が関わる近接場光学での単一感受率の必要性・非放射場の考慮の必要性,単一感受率の性質と微視的表式の導出,を述べました.この部分は25-26年度に論文投稿予定でしたが,進捗が遅れている現象論の研究との整合性を確保して27年度に投稿します.国際会議では,他にナノ構造がもたらす非放射場の非線型効果について発表しました[2];将来,本課題の現象論と比較する予定です. 2. 近接場光学での誘電率・透磁率の代替を目指して単一感受率の現象論の研究を進め,応用物理学会で2件の発表をしました.本理論は,まず,通常の方法で多電子系束縛状態の基底系を構成し,次に基底状態の電子間クーロン相互作用を非放射場に焼き直した後,外来の非放射場・放射場を対等に考慮する新しい摂動論です.[3]ではナノ構造近傍の分子のHOMO-LUMO間の非放射場・放射場による励起・脱励起を考慮した単一感受率の現象論を発表しました.[4]では,ナノ構造=エッジ・カスプの近似的対称性の既約表現で指定した電子状態間の励起・脱励起を考慮した単一感受率の現象論を発表しました.現象論は27年度に論文投稿する予定です. [1]-[4]のタイトル等は「現在までの達成度」をご参照ください.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
微視的理論は研究計画通りに進みましたが,現象論には遅れがでています.学会発表[1-4]はほぼ計画通りに行っていますが,微視的理論と現象論の整合性を確保するため論文投稿に滞りが生じました.現象論を構成する際の困難の原因は,非相対論的量子論で導出した線型・非線型の単一感受率の微視的表式が複雑で,物理的直感が効きにくいことです.しかし,ナノ構造=エッジ・カスプの近似的対称性が現象論の構成に役立ちそうなことがわかってきました[4].
[1] I. Banno: "Theory of the Single Susceptibility equally associated with Non-radiative and Radiative Fields in Near Field Optics," (13th International Conference on Near-Field Optics, Nanophotonics, and Related Techniques, Utah, USA, Sept. 2014) ,ポスター発表 P1. 35; [2] I. Banno: "Theory of Nanostructure-induced Nonlinear Optical Effects with Non-radiative Nature," (同上)ポスター発表 P2. 81; [3] 坂野 斎:"非放射場と放射場を対等に扱う 単一感受率による光学の理論 III 誘電率・透磁率の代替=現象論を目指して,"(第 75 回応用物理学会秋季学術講演会,北海道大学,2014年9月)口頭発表18p-C1-1; [4] 坂野 斎:"非放射場と放射場を対等に扱う単一感受率による光学の理論 IV," (第62回応用物理学会春季学術講演会,東海大学,2015年3月)口頭発表12a-A12-1
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Strategy for Future Research Activity |
1. 単一感受率の微視的表式の物理的理解を進めるとともに,2. ナノ構造=エッジ・カスプの近似的対称性を利用して現象論の構成を目指します.具体的には,1. は非相対論的量子力学による微視的表式の複雑さの原因である反磁性項の物理的由来と大きさの見積もりをして,強調される場合,無視できる場合を仕分けること,2. はエッジやカスプの近似的対称性を表す群の既約表現でナノ構造の局在電子状態を指定し,その状態間の励起・脱励起が許容か禁制かを非放射場・放射場ごとに判断し,線型・非線型効果の一覧を作成し,現象論を構成の助けとします.現象論の目処が立ち次第,微視的理論と論文投稿を行い,現象論は一定の完成度を得たら論文投稿します.
本研究課題に取り組んでいる間に,電磁相互作用を考慮した作用積分において,スカラーポテンシャルとともにベクトルポテンシャルについても最適化・消去して物質自由度だけで記述できることがわかりました.こちらにつきましても関連した仕事としてまとめたいと考えています.
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Causes of Carryover |
現象論の構成の進捗に遅れが生じたため,微視的理論,現象論の2本の論文の投稿を27年度に行います.そのための英文校正の費用として繰り越しました.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2本の論文の英文校正と,もし余剰がある場合には現象論の学会発表に使わせていただきます.
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Research Products
(4 results)