2013 Fiscal Year Research-status Report
励起光照射下でのNMRその場観測法の開発と光誘起現象への応用
Project/Area Number |
25610079
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
後藤 敦 独立行政法人物質・材料研究機構, 極限計測ユニット, 主幹研究員 (30354369)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光物性 / 核磁気共鳴 / 表面 |
Research Abstract |
本研究は、固体における光励起現象を核磁気共鳴法でその場観測するための手法の開発を目的としている。光による固体の状態変化を核磁気共鳴測定の制約下で実現するため、本手法に適したプローブや、光と高周波パルスの同期化技術などを開発する。また、開発した技術を具体的な研究に応用することで、本技術を活用するための測定手法の開拓を目指す。 平成25年度は、これまでに我々が開発してきた伝導冷却型核磁気共鳴装置をもとに、低温・光照射下で機能するシステムの開発を行った。最も重要な開発要素は、伝導冷却方式(交換ガスなし)において光照射と試料の効率的な冷却を同時に実現する試料ホルダーである。ここでは、測定対象として粉末状の試料を想定し、それに適したホルダーとして円筒型と平型のホルダーを試作した。さらに、アルミニウム粉末を用いて、その冷却性能の評価を行った。具体的には、まず、円筒型の試料ホルダーとしてサファイアの6ミリ管を試作し、その内部にアルミニウム粉末を封入して、低温での試料温度を27Alの緩和時間により測定し、ホルダーの近傍に設置した温度計の温度と比較した。その結果、低温で両者の間に有意な温度差が生じることがわかった。また、緩和曲線の形から試料内部の温度勾配の存在も示唆された。次に、平型のホルダーを検討するため、厚さ2ミリのサファイア板に深さ約1ミリの穴を生成し、その内部に粉末試料を封入後、上から別のサファイア板でプレスした。このホルダーに対して同様の方法で冷却性能を調べたところ、円筒型よりは改善したものの、やはり低温で温度差が確認された。これらの結果から、粉末試料の冷却には伝熱経路にさらなる工夫が必要であることがわかった。薄膜等の試料では同様の方法でも十分な冷却性能が得られていることから、今後は、透明で熱伝導性のよい樹脂等で粉末試料を固めて板状化する方法を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
光照射と試料管の効率的な冷却を同時に実現する試料ホルダーの開発を進めたが、粉末試料に対するホルダー開発において試行錯誤があり多少の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に引き続き、低温・光照射下で機能する伝導冷却型核磁気共鳴装置用試料ホルターを開発する。具体的には、薄膜・単結晶試料を想定し、それに適した試料ホルダーの開発を進める。また、粉末試料については樹脂等を用いた固化を検討する。次に、励起光と複数の高周波電磁波の同期化を実現するためのシステムおよびパルスシーケンスの開発を開始する。光照射時点からの遅延時間を系統的に変化させて核磁気共鳴測定を行うことで、光照射後の状態変化を追跡できるようになるものと期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費の節約により、直接経費当初予算の約6%相当分を次年度使用額に回した。 翌年度の消耗品費に充当予定。
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Research Products
(3 results)