2013 Fiscal Year Research-status Report
X線非線形光学を用いた可視光領域のミクロな感受率の解明
Project/Area Number |
25610081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
玉作 賢治 独立行政法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 専任研究員 (30300883)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | X線 / 非線形光学 / 光学応答 |
Research Abstract |
本研究は、X線領域の2次の非線形光学過程であるパラメトリック下方変換を利用して、物質の光学的性質を原子分解能でミクロに解明しようとするものである。初年度である平成25年度は、測定のノイズを激減させるためのナノ秒精度の同時計数回路の構築を行った。この回路を使うことで、パラメトリック下方変換で生成されるX線と光の2つの光子を2ナノ秒の精度で同時計数できるようになった。さらに、2ナノ秒おきの4つの異なる遅延で並行して同時計数を行えるようにした。これによってパラメトリック下方変換が観測できれば、その同時性を示すことができるようになった。また、時間遅れのある偶発的なバックグラウンドを同時に測定することで、加速器や光学系の時間変化に影響されない高精度の測定が可能となった。さらに、パラメトリック下方変換されたX線と可視光が反平行に放射されるような位相整合条件で測定できるように、既存の大型の横振り回折計を改造した。これによって、容易に位相整合依存性を測定できるようになった。 ナノ秒精度同時計数回路と改造した回折計を用いて、ダイヤモンドで紫外光へのX線パラメトリック下方変換の測定を行った。これは、可視光から紫外光にすることで、X線の弾性散乱からの離れることが出来て、信号が見やすくなるためである。また、理論的な考察から可視光が散乱面内に偏光して放射されることが分かったので、偏光子を入れることでS/Nを倍にすることが出来た。しかし、残念ながら有意な信号は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ナノ秒精度の同時計数回路を構築すれば、高いS/Nで測定できて、パラメトリック下方変換の信号が見られると考えていた。しかし、実際に測定してみると、ダイヤモンドが通常の緩和過程で放射する紫外光が想像以上に強いことが分かった。このため、偶発的なイベントが多くなり、結果として、十分なS/Nが達成できなかった。また、検出器の量子効率が低いことも問題であるように思われる。実験面では、光学系の調整に手間取り、色々な条件を試すことが出来なかった。また、十分な積算時間で測定を行うことが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
限られたビームタイム内にX線と紫外の光学系を的確に調整できるように、その手順を確立する。また、そのために必要な自動ステージや様々な調整治具を用意する。X線側で使っているAPD検出器の量子効率が低いのも問題であるので、多層化して実効厚を長くする、あるいは、別の検出器を使うことも視野に入れて、考えなおす。
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Research Products
(1 results)