2013 Fiscal Year Research-status Report
軟X線MCD検知ESR法の開発と表面・界面磁性への応用
Project/Area Number |
25610086
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野尻 浩之 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80189399)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 磁性 / 表面 / XMCD / 強磁場 / ESR |
Research Abstract |
本研究の目的は、軟X線円二色性分光(Soft-X-ray Magnetic Circular Dichroism :SXMCD)による超高感度の磁化検出能力を電子スピン共鳴と組み合わせ、表面や界面における原子層レベルの磁性研究を可能にする革新的な電子スピン共鳴法:ESRを開発することである。本年度は、SXMCD測定法のための全電子収量法が使用出来る空洞共振器の開発をネットワークアナライザおよびQバンドを光源として行った。その結果、Q因子を維持しながら試料を共振器内で電極付けして固定する方法を考案し、プロトタイプの装置を用いて、実際の放射光実験を行い、測定試料としてはフェライト焼結体ならびに薄膜を用いて、設計した装置でXASおよびXMCD信号を計測出来る事を確認した。さらに、オンサイトでの吸収の磁場依存性の計測を実施し、これらの結果を踏まえて、励起効率の検討を進め、各種の空洞共振器のデザインと試験を行い、最適化を進めた。表面の信号を計測する場合、強磁性共鳴であっても、バルクとは違うモードになる場合があるために、計算機シュミレーションを行う必要がある。実際に測定する大きなサイズの計算が可能なように、古典的なモンテカルロ法を用いた計算コードの開発を共同研究者のSchroeder教授と行い、表面とバルクの違いを評価出来るようになった。これらの結果により、SXMCD-ESR装置の設計に関して大きな進展があり、本装置設計のために必要な情報を得る事に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、開発を目指すXMCD-ESR装置のプロトタイプを作成しSPring8における試験測定を行った。この結果、プロトタイプの装置においてXASおよびXMCD信号の取得に成功した。また、共鳴条件を満たす空洞共振器の試験や信号の磁場依存性の測定にも成功した。また、得られた信号の帰属に関して考察を進めるとともに、そのために必要な、磁気共鳴の強度の絶対値を評価するために、通常のESR法やSQUIDを用いたESR法などによる評価実験を進めてきた。さらに、実験結果の解釈のために、薄膜のシュミレーション実験を、共同研究者と行っており、界面特有のモードの有無を予測出来るようになった。このように、初年度から放射光を用いた実験が進行しており、研究計画に照らして、課題の解決と目標の実現が着実に進行している。これらの状態から、本研究課題は順調に進捗出来ると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、順調に進めているので、計画に特に変更はない。H26年度は、最終年度であるので、SPring8の後期実験に向けて、装置を完成させる。前期に実験がないのは使用するBL25が分光器の改造中のためである。測定のポイントは、ESRの励起効率の向上と、その絶対値の評価であり、このために、cavityの改良、マイクロ波アンプの導入、各種絶対値評価手法を駆使した励起効率の決定などを進める。これらの予備実験は、東北大の強磁場センターの超伝導磁石を用いて行い、最終的な装置デザインを前期に完成させ、その後、組み立て調整を経て、後期に集中的に実験を実施する。また、これまでのプロトタイプの装置では、比較的低周波を用いてきたが、試験測定の結果をベースに現在テラヘルツ帯の装置を開発している。これを用いるとゼーマン分裂が大きいので、励起効率を大きく出来る可能性が高くなることが期待出来る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下の2つの理由で1064円の次年度使用額が生じた。 購入予定物品の在庫不足により、購入数が予定からずれた。 装置制作補助に関する謝金支出において、勤務予定時間に変更が生じたため。 上記の次年度使用額に関しては、購入予定物品の納期目処がついたので速やかに執行し、謝金分に関しても、不足した勤務時間を早急に確保して装置制作を進め、研究に支障のないようにする予定である。
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Research Products
(4 results)