2013 Fiscal Year Research-status Report
パルス強磁場下における高速イメージングシステムの開発
Project/Area Number |
25610087
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
徳永 将史 東京大学, 物性研究所, 准教授 (50300885)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 強磁場 / イメージング / フラストレーション |
Research Abstract |
本課題ではこれまで申請者のグループで開発した世界初のシステムであるパルス強磁場下のイメージング実験をさらなる低温、強磁場環境下で実現するべく研究に取り組んでいる。磁場・温度環境改善のためいくつかの可能性について検討を重ねた結果、低温・強磁場環境下で使用可能な無限系対物レンズを作製して試料付近に設置し、それを約1メートル離れた場所においた光学系で偏光解析および撮影を行う、という方式が良いという結論に達した。 この案に基づいて試作対物レンズを使用し、室温環境下でレンズと光学系を話した配置での試験試料の観察を行い、本研究目的に充分な画質での観察が行える事を確認した。その後、低温・強磁場環境下で使用可能な特別設計の対物レンズを作製するところまで本年度で実現した。 一方で実験装置が完成した際に観察対象となる物理の選定も非常に重要である。その有力候補として注目しているらせん型結晶構造を持つ三角格子磁性体で予備的な強磁場物性研究を行ったところ、強磁場下で電気分極の変化を伴う新たな磁気相を発見した。この物質と類似の磁気・結晶特性を持つ物質でソリトン格子と呼ばれる状態が発見され、現在多くの注目を集めている。今回我々が対象としている物質で発見した新規相において同様の状態が実現しているとすれば研究テーマとして大きく広がる可能性がある。今後本課題で構築中のイメージング実験手法を駆使して、その解明に向けた研究を推進したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題申請当初に予定していたイメージングファイバーを用いたイメージングをテストしたところ、得られた画像の解像度等に少し問題があることがわかった。その後、無限系対物レンズを試料付近の低温・強磁場環境下に設置する、という方針に切り替えたため研究のスタートに少し遅れが生じた。特別設計のレンズを新たに作製したため、光学設計会社との打ち合わせを繰り返し、ようやく対物レンズは完成した。平成26年度の早い段階で極限環境下での性能試験を行い、最適化に向けた取り組みを進めたい。 一方の対象物質に関する実験は予想以上の進展を見せている。イメージング装置の完成を待つ事無く、磁化や電気分極測定などで解明できる物理を追求しながら、効果的な成果発信を心がけたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
装置開発に関して、すでに対物レンズは完成しており、それを入れられる内径を持つパルスマグネットも揃っている。それらを組み合わせた光学系を自身で機械工作などを行いつつ最適化して、今年度中に極限環境下でのイメージングを実現させたい。 一方で観測資料については、予備実験の中で発見した特異な電気磁気相の解明に向けて、イメージング以外の実験も積極的に行ないたい。特に最近この試料ではらせん構造の右巻き/左巻きを制御した結晶での実験が可能になりつつある。らせんのカイラリティを制御した実験の予備実験なども通して、イメージングで見るべき対象を明瞭に絞り込んでおく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予備実験の結果、計画当初に予定していたイメージングファイバーを用いた方式よりも、無限系対物レンズを試料付近に設置する方式の方が良質の画像を得られる事がわかったので、計画を変更した。またそれに伴いレンズの設計について、業者との打ち合わせや予備実験を繰り返したこともあり、レンズの完成まで日数を要したこともあり、平成24年度中の予算執行額が予定より少なくなった。 初年度予定していたプローブ作製関係の費用は装置開発に不可欠なものであり、翌年度の使用が見込まれるので、そのまま翌年度に引き継いで使用させていただきたい。 初年度に作製が完了した特別製の無限系レンズを軸にして、低温・強磁場用のプローブ設計と作製を行う。前例のない装置であるため、試行錯誤をしながらの開発となるため、相応の真空部品、光学部品の購入が見込まれる。パルス強磁場下の画像撮影用のハイスピードカメラはすでに所有しているものを使うが、偏光解析をする部分についてはパルスマグネット上に設置できる形にする必要があり、それに必要な鏡筒、偏光子、ハーフミラーなどの費用が必要になる。 また装置開発で得られた優位性を生かしてなるべく物理として興味深いテーマを引き込むため、積極的な情報収集と情報発信を行って行きたい。
|
Research Products
(4 results)