2014 Fiscal Year Research-status Report
パルス強磁場下における高速イメージングシステムの開発
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25610087
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
徳永 将史 東京大学, 物性研究所, 准教授 (50300885)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 強磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題ではパルス強磁場下で使用可能な高速偏光顕微鏡観察を改良し、最高磁場50T以上、最低温度1.5Kのパラメータ領域での実験を目指している。同時にこれまで反射型配置でしかできなかった観察を透過配置でもできるようにすることで観察できる物理の拡張も目指している。 平成26年度では観察対象として想定しているCsCuCl3というカイラル磁性体に対して磁場誘起相転移の基礎物性を調べ、強磁場下でこれまで知られていない磁性強誘電相があることを明らかにした。イメージングシステムを用いた実験への発展を試みているが、試料が脆く整形が容易でないため現状では光学測定が可能な薄板状の試料が準備できていない。 もう一つ別の観察対象として考えているビスマスフェライトというマルチフェロイック物質に対しても基礎物性を測定したところ、この物質における電気磁気ドメインを非可逆的に変化させられることが分かった。この物質は不揮発性メモリとしての実用の可能性があり、その実現に向けてドメインのその場観察が非常に重要になった。そこで透過配置でのイメージングシステムを作製し、ビスマスフェライトのドメイン観察を行った。投稿準備中のため実験手法の詳細を書く事はできないが、通常は識別が困難な反強磁性強誘電体の電気磁気ドメインを顕微鏡で識別できたと思われる予備的な結果を得た。最終年度はこのドメインの電場・磁場変化を追求するとともに、さらなる強磁場、低温下での実験に向けて装置を完成させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低温強磁場環境下での観察対象としているカイラル磁性体に関して、その物理を理解するための強磁場下実験は順調に進んでいる。しかし試料が比較的もろいため顕微鏡観察可能な鏡面研磨を施すことが容易ではなく、イメージング以外の研究を先に進めている。 一方で代替候補として考えていたビスマスフェライトについて、平成26年度に研究上の大きな進展があった。その結果、この物質については磁場温度領域を拡張するより先に、透過配置での実験をすることが重要であり、それを世界的競合の中で急がなければならないことがわかった。そのため本来の計画と順序を入れ替えて、透過配置での光学系開発を急遽行ったため当初の計画以上には進まなかったが、概ね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
透過配置で行ったビスマスフェライトの反強磁性強誘電ドメインの外場制御に関して論文としてまとめることを最初に行う。平成27年の7月に開かれる国際会議での発表を予定しているので、それまでには話をまとめる予定である。それと平行して低温強磁場下用イメージングシステム開発を進め、年度内には目標とした数値を達成したい。この低温強磁場の新システムを使ってCsCuCl3の新奇磁性強誘電相についても研究する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた低温強磁場下用イメージングシステム開発に比較的大きな予算を必要としているが、本年度は透過配置でのイメージングを優先したため装置開発に必要な予算の一部を次年度に持ち越した。平成27年度には低温強磁場用の光学系および顕微鏡システムを完成させる予定であり、それに必要な光学部品および低温部品などの購入を繰り越し分も含めた予算で行いたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
低温強磁場用のイメージングシステムには液体ヘリウム中に挿入できる長距離の鏡筒が必要である。かつパルス強磁場下で使用するため大半の部品を非金属材料で揃える必要がある。そのような材料を購入し、自身で機械加工を行う事で低温部分の光学系を作製する。一方で常温に置かれた結像部分は市販品を中心に構成する。焦点調整のための機械部品や顕微鏡の基本部品などは、これまでのシステムとの互換性を生かしつつ市販品を使う予定である。低温部と常温部とはガス雰囲気の制御が可能な空間でつながっていなければならないため、必要な真空部品についても一部市販品を使いながら主要部分は自作して完成させたい。 また平成26年度に透過型配置の装置改良で実現した反強磁性強誘電ドメインの観察は世界初の試みである。平成27年夏に開かれる国際会議で発表を行い、世界に向けた情報発信を行いたい。
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Research Products
(12 results)