2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25610100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
稲見 俊哉 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (30354989)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 量子ビーム / 高分解能X線回折 / 四極子秩序 / 電子ネマティック転移 |
Research Abstract |
本研究計画では、微小な結晶対称性の破れの検出を目的とし、超高分解能X線回折法の開発とそれを用いた格子定数の精密測定を行う。熱膨張や磁歪といった結晶格子変形は電子物性を記述する上でも重要な物理量である。これに対し、高感度であっても巨視的な測定法では分域の存在下では分域和を観測してしまい、一方、X線回折は分域分離ができるものの分解能が低い。そこで、X線回折の高分解能化を行い、微小格子変形の検出から結晶格子の真の対称性を明らかにし、電子ネマティック相などの電子相転移の実態を解明することを本研究の目的とする。 昨年度(初年度)は、まず、要となる高分解能モノクロメータの整備を行い、(CeLa)B6を試料として、実験手法の開発を行った。若干の試行錯誤の後、(CeLa)B6のIV相における立方晶-菱面体晶転移の検出に成功し、詳細な磁場-温度依存性の測定から、その大きさと方向、温度および磁場依存性を決定することができた。この結果からIV相の多極子物理について議論ができ、物理学会で発表した他、現在論文にまとめて投稿中である。実験手法の上では、濃度揺らぎや結晶保持方法の影響について知見が得られた。 この他、まず、URu2Si2の隠れた秩序相における正方晶-斜方晶転移の有無について本手法を適用し、検出精度の範囲では斜方晶への転移はないとの結論を得た。結果は物理学会で発表した他、論文にまとめている最中である。既報とは異なる結果となり、隠れた秩序相の秩序変数について重要な知見となった。また、磁場誘起多極子秩序を示すことが理論から示されているSmRu4P12について予備測定を行い、核磁気共鳴の実験から示唆されていた立方晶-菱面体晶転移の検出に成功し、今後詳細な磁場温度依存性の測定を予定している。このように、本手法の電子物性研究への有用性をいろいろな方面で示すことに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では高分解能X線回折を用いた結晶対称性の精密評価を目的としており、これを達成するために具体的な対象として、確実な課題として(Ce0.7La0.3)B6のIV相の菱面体歪の測定を、挑戦的な課題としてCeB6の正方晶歪の測定を、そして研究期間終了後の発展課題としてURu2Si2の隠れた秩序相における斜方晶歪の有無や高温超伝導銅酸化物の擬ギャップ相等を挙げていた。このうち(Ce0.7La0.3)B6のIV相の菱面体歪の測定を終了し、加えて、URu2Si2の斜方晶歪の測定を終了し、それぞれ論文投稿および投稿直前まで持ってくることができた。実験手法の確立は七分方終わり、手法の有用性も各方面に示すことができた。CeB6の測定は残りの期間にもう少し足せば完了できると思われる。全体として、当初の予定通り+αで進捗しており、残りの技術開発も大きな困難はなく進むものと予想している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、本研究の後半は挑戦的な課題であるCeB6の正方晶歪の測定へ進む。技術的な開発要素としては、後置モノクロメータの高分解能化であり、機器の設計・製作は既に終了しているので、動作試験→試験測定→改良→本測定という順番で進めていく予定である。要素技術としては知られたものであるので遂行上大きな困難はないものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な購入品目であるチャンネルカット結晶とそのヘリウムチェンバーの製作において、機構の推奨する相見積もりなどの制度を利用するなどして、業者間の競争により購入費用の低減に努めた結果、若干の次年度使用額が生じた。 実験用消耗品として、液体ヘリウム100リットル(約25万円)×2回が必要。また、成果発表および情報収集のための会議参加費として、強相関電子系の国際会議であるSCES2014(フランス・グルノーブル)への参加費、旅費、滞在費として約50万円、物理学会(2回)の旅費、滞在費として14万円程度必要。その他、打ち合わせのための国内旅費(2回)として8万円程度、加えて、消耗品購入、論文の英文校正、論文投稿料として14万円程度用いる。
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