2014 Fiscal Year Research-status Report
非平衡ゆらぎから自律運動へのモード分岐:散逸系の新シナリオ
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25610111
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
吉川 研一 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80110823)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非線形開放系 / 非平衡ゆらぎ / エネルギー変換 / 運動機関 / 時空間秩序 / 階層構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
非平衡定常条件下での自律運動についての、実験的研究を系統的にすすめ、数理物理的なモデルの構築をめざして研究を進めた。26年度には、光照射によるcm物体の並進・回転運動について成果があったが、本年度はレーザー光を一定の位置で照射した条件下、cmサイズ油滴が、自発的な運動を示すことに注目して研究を進めた。その結果、液滴が、光強度に応じて順に、静止、ランダム、往復、回転、と運動モードを変化することを見出した。この結果は、非平衡開放条件下での自発的な対称性の破れにその本質があると考え、その運動モード分岐について現象論的な微分方程式を導出することにより、半定量的に実験結果を再現することに成功している。具体的には、界面で移流拡散する高温部分に対応した表面張力の空間勾配とマランゴニ流が、対称性の破れにどのように関与するのかといった点に考慮した理論となっている。本研究成果は、本年度、Journal of Chemical Physics 誌に発表済みとなっている。 更に関連した研究成果としては、熱ゆらぎによって引き起こされる細胞内の小器官や顆粒の特異的な分布について、簡単なモデルを提案し、理論的な考察をすすめた。その結果、混雑環境下のもと、膜の弾性の変化により、小胞の内表面と内部とのあいだで、粒径サイズの分布の反転が生じることを見出している。この成果は、本年度の、Journal of Chemical Physics 誌に発表済みとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
光照射によるマクロスケールの自律運動について、25年度には、界面活性剤の有無に依存して、正の走光性と負の走光性の間でスイッチグふることが可能であることを見出している。本年度には、化学的な組成を変化させることなく、同一のcmサイズの液滴に対して、光強度に依存して、二段階のモード転移をともなう規則運動を実現することに成功した。国際的にみて、類似の研究発表は皆無であり、極めて独創性の高い研究となっている。」
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画の主要3課題の研究を更に大きく発展させる。1)運動タンパクの集団が示すマクロな自律運動と、化学的不安定性による実空間モデリング、2)光照射によるcm物体の並進・回転運動、3)直流電場での実空間limit cycle運動、この3課題である。
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Research Products
(8 results)