2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25610114
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 慎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10401150)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 量子エレクトロニクス / 原子・分子物理 / 低温物性 |
Research Abstract |
最近では電子の永久双極子モーメントの最も精度の高い測定が冷却分子を用いて行われるなど、冷却分子の活躍の場はますます広がっている。利用が期待される分子の種類や興味のある温度領域、さらに分子の個数などが多岐にわたることを考えると、分子冷却法を新しく開発し続けることが非常に大事であることが分かる。本研究では冷却原子により分子を協同冷却することを目的としている。この方法は特に振動・回転の基底準位にある冷却分子を作成する方法として有力である。振動・回転基底状態にある冷却分子は大きな電気双極子モーメントをもつため、電場で高速に制御することが可能である。この研究では生成される分子の密度が低いため、分子間の相互作用を測定することは難しいが、分子と原子の間の弾性・非弾性散乱の断面積は測定できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は、まずKRb分子の生成効率の安定化に取り組んだ。分子の生成効率を左右する要因として、磁場ゆらぎが挙げられる。実験中の磁場ゆらぎを評価するために、磁場に敏感なマイクロ波遷移の周波数を測定し、その長期的なゆらぎを観測した。具体的には41K87Rb |X1Σ, v=86, N=0, F1=3/2, F=0, mF=0>と|a3Σ, v=16, N=0, F1=1/2, F=1, mF=1>の間の634MHzにある遷移を駆動し、そのゆらぎを観測した。その結果、時定数が1分ほどで絶対値にして10mGほどゆらいでいることが分かった。このゆらぎは地磁気補正用のコイルに追加で補正電流を流す事でキャンセルが可能である。また、磁場に敏感な遷移と敏感でない遷移の線幅の差は磁場勾配から来ると考えられるので、Δm=0とΔm=1の遷移の幅を比較することで、磁場勾配も検出することができる。この方法で磁場勾配を、メインのコイルと中心軸をずらした補正コイルを新たに加えることで、キャンセルすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
KRb分子の作成においては、誘導ラマン断熱遷移の効率は70%程度と比較的高いが、光会合の効率は極めて低いと考えられるので、その最適化を行う。具体的には光会合に用いるレーザー光の増強、磁気光学トラップ中の原子気体の密度の向上、光会合に用いる遷移の最適化、などを行う。また、現在の実験装置では誘導ラマン断熱遷移に用いるレーザーの周波数ロックが外れやすいことが問題となっているが、これはロックに用いている電子回路の帯域の問題と思われるので、回路を改良してロックが外れにくくすることが肝要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度にKRb分子の高精度な分光を行い、その結果を元に内部状態の制御を行う予定であったが、分光結果が周囲の電場や磁場のゆらぎの影響を受けていることが分かったため、計画を変更し、周囲の電磁場環境の安定化を行うこととしたために計画に遅れが生じた。 次年度に分子の内部自由度、及び外部自由度の制御を行い、未使用額はその経費に充てる予定である。
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