2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25610114
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 慎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10401150)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 量子エレクトロニクス / 原子・分子物理 / 低温物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に磁場ゆらぎの安定化に成功し、磁場勾配もキャンセルすることに成功した。平成26年度は協同冷却の実現のために必要な、極低温極性分子の光トラップの開発に取り組んだ。磁気光学トラップ中の混合原子気体(KRb)から光会合と誘導ラマン断熱遷移によって極低温分子を作成しているため、その(並進運動の)温度は100マイクロケルビン程度ある。先行研究により、KRb分子は1064nmの光に対する吸収がほぼ無視でき、さらに分極率も原子と同じオーダーであることが分かっている。従って、この波長のレーザーを集光して極性分子の光トラップを行うことは可能である。ただし井上研にある10ワット級のファイバーレーザーやDPSSレーザーをそのまま集光してトラップを作っても、ビーム径を数十ミクロン程度に絞らざるを得ず、磁気光学トラップから分子をロードする効率は非常に下がってしまう。そこで我々は共振器を用いて光の強度を増強する「光共振器トラップ」を設計した。共振器の機械的な安定度を高めるためには共振器の長さが短いほうが良いが、今回は既存の真空槽の外側にミラーを配置するため、共振器長が約60cmという非常に長いものになる。共振器の性質を調べるため、まず真空槽とは別の場所に組み立てたところ、光の強度にして200倍程度という十分な増強因子を得ることができた。また、ミラーマウントの間を金属治具でつなぎ、共振器長を機械的に安定化する方法が極めて有効なことが分かった。そこで実際の真空槽の外側に共振器を組み立て、増強因子を測定した。真空槽の窓はすでにブリュースター窓が取り付けてあり、窓におけるロスは無視できると期待できる。実際、増強因子を測定したところ、数十倍程度の増強因子は見られたものの、全体に周波数ロックが不安定で増強因子の正確な同定には至らなかった。
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