2013 Fiscal Year Annual Research Report
メソ微小空間に閉じ込めた低温液体の秩序化と相転移の発現
Project/Area Number |
25610119
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小國 正晴 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (50144423)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 液体 / 相転移 / 熱容量 |
Research Abstract |
細孔性シリカMCM-41およびSBA-15を用いて,直径が1~10 nm の細孔内液体の熱容量の温度依存性の挙動を調べた。測定装置としては断熱型熱量計を用いた。対象液体として,球状で分散力が主要な分子間力であるシクロヘキサン分子と,平板状で[C-H (π電子)]水素結合が主要な分子間力であるベンゼン分子を選択した。 両者に共通した熱挙動として,二点が挙げられる。一点は,過冷却液体の特性であるガラス転移の温度は細孔径にあまり依存しない,ということである。これは低温で分子が互いに強く凝集した状況では,分子再配置の素過程の活性化エネルギーは分子凝集状態にあまり依存しないことを意味する。すなわち,報告者が提示する秩序クラスター凝集に基づく不均一構造およびα,β過程のモデルと矛盾がない。他の一点は,熱容量になだらかなピークが見いだされ,ピーク温度は細孔径の増大とともに低温側にシフトした。昇温時の,このピークは低温液体に特有のものである。バルク液体では,このピークはガラス転移温度以下に存在するものと理解される。細孔直径を小さくすることで,液体が取り得る配置の数が少なくなり,その励起エネルギーがガラス転移温度以上にシフトしたものと理解される。細孔直径が増大すると,液体分子凝集体は小さなエネルギー差で種々の配置を取ることが可能になり,そのエネルギー差に対応する熱容量ピーク温度が低下し,バルクではガラス転移温度以下になるものと理解される。 シクロヘキサンでは 2.1 nm 近傍で 155 K 付近に鋭い1次の相転移を示した。2.1 nm より大きくても,小さくてもその効果は減少する。シクロヘキサンは球状分子であり,細孔壁との相互作用も含めて,2.1 nm で丁度うまくはまり込む,例えば13個の分子で正二十面体構造を作り,5回対称軸が細孔チャネルに沿う構造が形成されたものと理解される。
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