2013 Fiscal Year Research-status Report
中周期帯スロー地震観測のためのレーザー歪偏差計の開発
Project/Area Number |
25610129
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新谷 昌人 東京大学, 地震研究所, 准教授 (30272503)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スロー地震 / レーザー / 歪計 / 干渉計 / 歪偏差 |
Research Abstract |
本研究は現在明確には観測されていない中周期帯(継続時間10^3~10^5 秒)のスロー地震を観測できる手法として、新規にレーザー歪偏差計を開発し、プレート境界の当該イベントの初検出を目指すものである。検出できれば、さまざまな時間スケールで観測されているスロー地震が同一の物理過程であるか否かを観測的に決着できるのみならず、物理モデルの構築に必要な基礎データを提供する。 H25年度は実験室においてレーザー歪偏差計の計測部を構成し、検出精度の評価を行った。小型の真空容器内の同一光学台上にビームスプリッタを中心に左右対称な各基線の差の信号を干渉光として得られる光学系を構成し、歪偏差のノイズレベルを計測した。その結果、対称型レーザー干渉計のノイズは、低真空中で周期10秒から20000秒の帯域では、光路のわずかな非対称性とレーザー波長の不安定性に起因し、それより長周期側では温度変化による光学定盤や光学素子の熱膨張に起因すると分かった。また、温度変化は当初光学台の支柱の熱伝導によるものが大半と予想していたが、計測部をモデル化し大まかな伝熱量を見積もったところ、支柱の熱伝導の寄与が半分程度、残留空気の熱伝導と輻射による伝熱がそれぞれ1/4程度だと計算された。この結果と同程度のノイズが残留すると仮定すると、継続時間1万秒のスロー地震を観測できるまでノイズを落とすには500m以上の基線長が必要であり、伝熱を低減すべきであると分かった。 並行して、典型的なスロー地震から生じる歪偏差の予想振幅をシミュレーションにより計算した。地下40kmにスロー地震の点震源を想定し、その断層運動が作る地表における歪偏差の振幅および空間分布を計算した。本研究開始時の見積とほぼ一致する結果が得られた。ただし、空間分布があるため場所によって若干振幅が異なることがわかった。この結果を踏まえ、観測に適した場所を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H25年度は実験室においてレーザー歪偏差計の計測部を構成し、検出精度の評価を行う計画であり、予定通り進められた。しかし、温度変化によるノイズが計測され、当初光学台の支柱の熱伝導によるものが大半と予想していたが、残留空気の熱伝導と輻射も無視できないことがわかり、その対策の検討と実験方法の変更に時間を要した。スロー地震から生じる歪偏差の予想振幅のシミュレーションは計画どおり進められた。
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Strategy for Future Research Activity |
温度変化によるノイズの低減は重要な課題であるので、伝熱モデルを精緻化し実験で定量的に検証する。その結果を受けた断熱対策を行い、温度ノイズを再測定し、目標精度が達成できるための歪偏差計の基線長などのパラメータを決定する。別途、並行して検討していた観測場所に実際に装置を設置し、改良を続けながら1年程度の試験観測を実施し、イベントの解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
温度変化によるノイズは想定されていたが、当初予想していた支柱の熱伝導以外に、残留空気の熱伝導と輻射も無視できないことがわかり、その対策の検討のためのセラミック台の導入と評価に時間を要し、当初計画していた観測用の光学・真空機器の仕様決定までに至らなかった。 伝熱モデルを精緻化し、実験結果を受けた断熱対策を行う。歪偏差計の基線長などのパラメータが決定されるので、元の計画に沿って観測用の光学・真空機器などに次年度使用額を充てる。
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