2013 Fiscal Year Research-status Report
ミュオンスピン回転法によるケイ酸塩鉱物中の水素の振る舞いの研究
Project/Area Number |
25610130
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
船守 展正 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70306851)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ケイ酸塩高圧相 / 中性水素原子 / ペロフスカイト型 / ルチル型 / ミュオンスピン回転法 |
Research Abstract |
当初計画では、世界最高強度のパルスミュオンの発生に成功しているJ-PARC・MLF施設(茨城県東海村)のD1ビームラインのミュオンスピン分光器用に、数K~数百Kの温度領域で利用可能な、直径2mm程度の小型試料の測定のための試料ホルダを製作して、ケイ酸塩の高圧相に対する実験を行うことになっていた。しかしながら、J-PARCにおける放射性元素の遺漏事故などもあり、当初計画を変更して、海外の施設で、下部マントルの最重要構成鉱物であるペロフスカイト構造のMgSiO3や昨年度までに実験を行ったルチル構造のSiO2との比較のためのルチル構造のGeO2などについての実験を行うこととした。ペロフスカイト型MgSiO3については愛媛大学で、ルチル型GeO2については物質・材料研究機構で、それぞれ大型プレス装置を用いて高圧合成し、PSI(スイス)において、ミュオンスピン回転法による測定を実施した。ペロフスカイト型MgSiO3では、中性水素原子に相当するミュオニウムの生成を示唆する結果が得られた。一方、ルチル型GeO2では、ミュオニウムは全く生成しないことが明らかになった。ルチル型SiO2では、ミュオニウムの大量生成が確認されており対照的な結果といえる。これまでの研究成果は、日本中間子科学会の会誌「めそん」に2報の依頼原稿として公表されている。また、ルチル型SiO2についての研究成果をまとめた論文についても原稿の執筆を完了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画からは大幅な変更をしたが、地球マントルにおける中性水素原子の存在の可能性について議論するためのデータの蓄積が進んでいる。ミュオンの実験の専門家からも高く評価され、日本中間子学会の学会誌編集委員会からの依頼で2報を寄稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
J-PARC・MLF施設は再稼働したものの、海外の施設での実験のための予定外の支出があったため、新規に試料ホルダを製作するのは予算的に厳しくなった。これまでに得られているデータの解析を進め、地球マントルにおける中性水素原子の存在の可能性についての考察を深め、論文として発表することを最優先に進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
J-PARC・MLF施設の運転停止などにより、当初計画からの大幅な変更が必要となり、予定していた試料ホルダを製作しなかったことによる。 J-PARC・MLF施設は再稼働したものの、運転停止の影響が残り、新規に試料ホルダを製作しても、試験のための十分なビームタイムを確保することは容易ではない。予算面でも厳しいため、無理に製作することはせず、状況に応じて、これまでに取得したデータを更に補強するような測定や第一原理計算を行うための費用にあてることも検討する。
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