2013 Fiscal Year Research-status Report
南極大型大気レーダーによる流星を利用した下部熱圏風速3次元イメージング観測
Project/Area Number |
25610145
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
堤 雅基 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (80280535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨川 喜弘 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (20435499)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中間圏下部熱圏 / 極域 / 風速3次元イメージング / 大型大気レーダー / 流星 / 多チャンネル受信 / リモートセンシング |
Research Abstract |
2010 年に南極昭和基地(南緯69 度)に設置された大型大気レーダー(PANSYレーダー)を用い、これまでになく多チャンネルの受信手法に基づく高品質な流星エコー観測手法の開発に着手した。全55系統の内の12系統のPANSY部分システムを使い、評価用生データ取得実験(12チャンネル)を2013年の6月および7月に実施した。その試験データをもとに、12チャンネルの受信データを位相合成することで微弱な流星エコーを検出する基本アルゴリズムを開発することができた。このエコー検出アルゴリズムは、PANSYフルシステムである55チャンネルでの運用においてもそのまま使うことが可能である。現状では輸送船「しらせ」の昭和基地接岸断念(平成23および24年度)による発電機燃料不足などの制限により、PANSYレーダーは部分システムによる運用を余儀なくされているが、近い将来のフルシステム運用において本研究で開発した手法が採用できると期待される。 また、無線免許帯域内の近接2周波数を短時間切り替えする新しい実験手法を提案し、京都大学のMUレーダーを利用して2013年8月に観測を実施した。この手法によりアレイアンテナの最短間隔が1/2波長よりも長い場合(MUレーダーおよびPANSYレーダー)でも、全方位・仰角からのエコー到来角をあいまいさなく推定することが可能となる。基本的にMUレーダーとPANSYレーダーはほぼ同じアンテナ間隔を持つアレイ構成であるため、MUレーダーで開発した手法はPANSYレーダーでそのまま応用できる。 以上の実験およびアルゴリズム開発の成果を、2回の国内学会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の成功にとって最も重要となるのは従来よりも1ケタ多い数の流星エコー取得である。そのためのエコー検出アルゴリズムと到来方向あいまいさ除去手法の開発については、どちらも問題なく開発が進んでいる。従来の流星エコー観測とは一線を画した観測手法として確立することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に基本開発の終了した観測アルゴリズムを使い、大量エコー取得の観測を実施する。昭和基地への輸送事情に伴う制約からPANSYフルシステム送受信実験が実施できない場合は、部分システムによる観測を実施する。部分システムのみの運用であっても、開発を主目的とする本萌芽研究への影響はさほど大きくない。 大地の起伏などにより特に低仰角のアンテナ特性が大きな影響を受け、高精度なエコー到来方向推定が困難となるため、以下のようなアプローチで問題解決にあたる。1:比較的平坦地部分に設置されて起伏や積雪の影響の小さなアンテナの受信データをまず基準として扱い、アレイ全体のアンテナに補正をほどこす。2:天空上で絶対的な位置が分かっているターゲット(具体的には、群流星からのエコー)を使ってアンテナからの受信データを補正する。 また太陽系天文学への応用のために、レーダーイメージング手法を用いて流星飛跡の立体構造推定(流れ星が直線状に流れる形を、電波を使って可視化する)を試みる。これは、本流星観測手法が超多チャンネル受信システムを使用しているために応用可能な手法である。 年度後半には、PANSYレーダーの運用状況に応じて、他観測(中間圏乱流観測・PMSE 観測など)との併用観測を実施する。上記により得られた結果を、国内外の学会や学術誌など(大気および天文関連分野)で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文執筆の計画がやや遅れたことにより、英文校閲費用や論文掲載費を次年度に回したこと、また次年度に予定している国際学会出張のために出張旅費の年度配分を一部変更したこと、さらに当初計画では予定していなかった次年度の物品購入を少額だけ行うことにしたことが理由である。 大型大気レーダーの国際学会であるMSTレーダーワークショップ(5月)、国内学会(5月、11月)に本研究費を使って出張し、研究成果発表を行う。その成果を英文にまとめ、英文校閲を経て国際的な英文誌に発表し、掲載費用を本研究費から支出する。またハードディスクなど研究に必要な細かい物品を本研究費にて購入する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Program of the Antarctic Syowa MST/IS radar (PANSY)2014
Author(s)
Sato, K., Tsutsumi, M., Sato, T., Nakamura, T., Saito, A., Tomikawa, Y., Nishimura, K., Kohma, M., Yamagishi, H., Yamanouchi, T.
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Journal Title
Journal of Atmospheric and Solar-Terrestrial Physics
Volume: 118
Pages: 2-15
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Variations of nitric oxide in the mesosphere and lower thermosphere over Antarctica associated with a magnetic storm in April 20122014
Author(s)
Isono,Y., A. Mizuno, T. Nagahama, Y. Miyoshi, T. Nakamura, R. Kataoka, M. Tsutsumi, M. K. Ejiri, H. Fujiwara, and H. Maezawa
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Journal Title
Geophys. Res. Lett.
Volume: 41
Pages: 2568-2574
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Simultaneous PMC and PMSE observations with a ground-based lidar and SuperDARN HF radar at Syowa Station, Antarctica2013
Author(s)
Suzuki, H., T. Nakamura, M. K. Ejiri, T. Ogawa, M. Tsutsumi, M. Abo, T. D. Kawahara, Y. Tomikawa, A. S. Yukimatu, N. Sato
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Journal Title
Analles Geophysicae
Volume: 31
Pages: 1793-1803
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Decrease in sodium density observed during auroral particle precipitation over Tromso, Norway2013
Author(s)
T. T. Tsuda, S. Nozawa, T. D. Kawahara, T. Kawabata, N. Saito, S. Wada, Y. Ogawa, S. Oyama, C. M. Hall, M. Tsutsumi, M. K. Ejiri, S. Suzuki, T. Takahashi, and T. Nakamura
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Journal Title
Geophys. Res. Lett.
Volume: 40
Pages: 4486-4490
DOI
Peer Reviewed
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