2014 Fiscal Year Research-status Report
鏡肌のナノレベル表面観察による断層における素反応解明への挑戦
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25610162
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鍵 裕之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70233666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安東 淳一 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50291480)
吉野 徹 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部 材料技術グループ, 研究員 (90614545)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鏡肌 / 表面構造 / 原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で対象とする“鏡肌”は滑らかな光沢を示す断層面として顕著な特徴を有し、その存在は古くから知られているが、微細組織の詳細やその成因、断層運動に与える影響に関してはほとんど理解されていない。本研究では、天然の石灰岩中に発達した鏡肌の微細組織観察を行い、その詳細を明らかにするとともに、鏡肌の再現実験を行い、力学データと回収試料の 微細組織観察から鏡肌の形成過程と鏡肌を伴う断層の力学特性を明らかにすることを目的とした。 鏡肌は原岩を構成する岩石と同様の化学組成を持つ厚さ数十 nmの薄層で、この薄層は長径が数十 nmの偏平な粒子から構成されることが明らかになった。再現実験により、天然のものと同様の微細組織を持つ鏡肌が再現され、天然の鏡肌形成の素過程が再現できたことを示している。本研究により以下の事が明らかとなった。鏡肌はすべり変位・垂直荷重が大きいほど良く発達し、垂直荷重が大きいほど短いすべり変位で発達する。また、比較的低い荷重での実験では鏡肌の形成に伴い摩擦係数の劇的な減少は見られないが、高い荷重下での実験では低い摩擦係数を示すことがわかった。さらに鏡肌を構成する粒子は垂直荷重が増加するに従ってより偏平になる。 現在までに得られた結果は、鏡肌は断層運動による変形が集中することにより細粒化した粉末状物質が“トライボフィルム”と同様の剪断応力下での焼結を受けることで形成されたことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天然の鏡肌試料ならびに室内での再現実験によって得られた表面組織が、数十ナノメートルの粒子によって構成されているという共通性を見いだすことができた。本研究の結果は計画当初の目標であった鏡肌形成過程の解明に大きく近づくものであり、計画はおおむね順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに多くの天然試料と摩擦実験で得られる試料を測定対象として、データを増やすことによって、これまで得られた知見の再現性を確認し、原著論文を可能な限り早く発表したい。
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Causes of Carryover |
初年度に引き続き海外での鏡肌のフィールド調査ならびに資料収集のための出張を行う予定であったが、日程を組むことができず執行することができなかった。また、測定系の改良を行う予定であったが、改良に必要な光学部品の調達に時間を要した。そのため次年度に使用する額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外での調査を引き続き行う予定であるが、日程等を短縮して出張費を減らす予定である。また、測定系の改良は是非行いたい。また、鏡肌に関連して地球深部起源の鉱物試料の表面観察を行うための消耗品、旅費などにも充てる予定である。
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Research Products
(2 results)