2014 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙・原始地球環境におけるホモキラリティーの発現と増幅
Project/Area Number |
25610165
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
三田 肇 福岡工業大学, 工学部, 教授 (00282301)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ホモキラル / ミクロスフェア / プロテノイド / アミノ酸 / ジアステレオマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、宇宙環境で発現したと考えられているわずかな不斉(光学異性体比の偏り)が、現在の生物界でみられるホモキラルな世界(アミノ酸であればL-体のみからなる世界)に発展していく過程を実験的に検証することを目的とした研究を行った。具体的には、これまでに申請者が研究を続けてきた前生物学的ペプチド生成反応中に、僅かに光学異性体比に偏りのあるα-ジアルキルアミノ酸あるいはその前駆体であるエチルメチルヒダントインを加えることで、生成するペプチド分子に取り込まれるアミノ酸の光学異性体比に偏りを導入し、プロテノイドミクロスフェア(球状構造体)形成という自己組織化過程の中で、光学異性体比の偏りの増幅効果が得られるか否かを検証することを目指した。 プロテノイドの生成反応を進めていく上で、加えた光学異性体比に偏りのあるアミノ酸がプロテノイドのカルボニル末端にのみ結合することでアミノ酸の縮合が停止する可能性が生じた。このような反応機構であれば、添加されたアミノ酸の光学活性を認識して、次に結合するアミノ酸に光学活性の選択がなされるという本研究の目的が達せられないことになる。そこで、質量分析計を用いてプロテノイドの化学構造の解明を先に行うことにした。その結果、複数のアミノ酸を添加すると、それらが組み合わされた種々の共重合体が生成することが確かめられ、光学異性体の選択の可能性が示された。一方で、プロテノイドミクロスフェアに取り込まれるプロテノイドには種々のアミノ酸を含む共重合体が少ないことが示唆された。このことは、ミクロスフェア形成に伴う分子選択は期待通り生じるものの、光学異性体の偏りの発展にはあまり期待できないことを示している。 光学異性体の偏りの発展には、ミクロスフェア形成に伴うものより、共重合体形成に伴うジアステレオマーによる効果の方が期待できることが示唆される結果が得られた。
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