2013 Fiscal Year Research-status Report
機能性分子F430を用いた堆積物深部メタン生成ポテンシャルの精密定量
Project/Area Number |
25610166
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
金子 雅紀 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, ポストドクトラル研究員 (80633239)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 補酵素F430 / メタン生成アーキア / メタン / LC-MS/MS分析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまで定量的な議論が困難であった海洋堆積物深部でのメタン生成アーキアのバイオマスや活動を定量的に評価するツールを開発・実用化する事にある。具体的には、これまで応用されたことのない、メタン生成アーキアがメタン生成のために用いる機能分子、補酵素F430の堆積物中における濃度を精密に分析する手法を開発し、メタン生成アーキアの分布や活動度を定量的に明らかにする事である。それにより、メタンハイドレート形成や地球温暖化に関与するメタンが、海底下のどこで、どれくらいの速度で作られているのかを理解でき、地球における炭素循環に新しい知見を与えることができる。 当該年度の計画は1.F430抽出・精製法の確立、2.F430標品の作成、3.1000倍程度の分析感度の向上を行うことであった。1.においては、試行錯誤の結果95%以上の回収率を実現できた。2.においては、メタン菌が高濃度に存在する活性汚泥試料からのF430メチルエステル(F430M)の抽出、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による単離によって得られたF430Mは各種分析によって高純度であることが確認でき、さらに濃度を決定することで、世界で唯一のF430Mの濃度既知溶液を作成することができた。これによりF430M標品の作成を達成できた。3.においては、標品を用いて、高速液体クロマトグラフ・質量分析計/質量分析計(LC-MS/MS)による分析法を開発した。これにより従来の分析手法に比べ10万倍の高感度化が実現できた。 これらの成果はAnalytial Chemistryに掲載され、審査では高い評価を受けた。その他5回の学会発表(内国際学会2回)を行った。 以上のように当該年度の研究計画を非常に高い次元で達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の計画は1.F430抽出・精製法の確立、2.F430標品の作成、3.1000倍程度の分析感度の向上を行うことであった。1においては、低温度下における抽出、固相抽出カラムによる精製、誘導体化による安定化・低極性化の方法を確立したことにより95%以上の回収率を実現できた。また、2において、メタン菌が高濃度に存在する活性汚泥試料からのF430メチルエステル(F430M)の抽出、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による単離によって得られたF430Mは核磁気共鳴分光法や質量分析により高純度であることが確認でき、元素分析計により濃度を決定することで、世界で唯一のF430Mの濃度既知溶液を作成することができ、F430M標品の作成を達成できた。3においては標品を用いて、高速液体クロマトグラフ・質量分析計/質量分析計(LC-MS/MS)による分析法を開発した。従来、F430は吸光光度計を用いて定量分析が行われていたが、LC-MS/MSを用いたゼロコリジョンエナジーMRM法による分析法を確立し、従来の10万倍高という予定よりも遙かに高い次元で高感度定量分析法を確立した。このように、研究計画を完璧に達成できたため、最高評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降の研究計画は初年度に開発した手法を基に、1.環境試料中のF430の定量分析法を確立する、2.培養実験や、水田土壌などを用いてF430濃度とメタン生成アーキアのバイオマスや活性の関係性を明らかにする。3.深海掘削コアへの応用となっている。初年度の研究が期待以上の成果であったため、今後の計画については当初の予定通り行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分析法開発段階における試行錯誤が比較的スムーズに解決したことにより、消耗品費が抑えられ、結果として余剰金が発生した。 翌年度は開発した手法の応用のため、環境試料採取をフィールドで行う機会がある。余剰金はフィールド研究での旅費および消耗品費に効果的に用いる。
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