2013 Fiscal Year Research-status Report
自発形成するクーロン結晶における粒子温度と結晶欠陥に関する研究
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25610174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
足立 聡 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (80358746)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 微粒子プラズマ / クーロン結晶 / 粒子温度 / 結晶欠陥 |
Research Abstract |
プラズマ中の微粒子が固相(クーロン結晶)を自発形成するメカニズムを理解することを最終到達目標としている。その一環として、クーロン結晶の状態を表す主要パラメータの一つである粒子温度に着目し、研究を進めた。これは従来から行われている粒子温度計測法である速度分布関数法が室温の10倍程度高い温度をしばしば示す結果が確からしいか、確からしい場合に粒子加熱メカニズムは何か等を調べるためである。当年度は、二体分布関数法およびそこから更に進めた方法である固相中に励起される波について調べた。その結果、二体分布関数法においても室温の10倍程度高い温度となることが示された。また、固相中に励起される波が複数存在することを示すデータが得られた。これはクーロン結晶がデバイモデル的な振る舞いを示すことを示唆する結果であり、今後更なるデータの蓄積を行い、クーロン結晶内部の波についての理解を深める。励起される波からも温度を求めることができ、その結果は室温の5倍程度であった。この値は速度分布関数法、二体分布関数法に比べると約半分の温度であるものの、室温に比べると有意に高い温度である。従って、粒子温度は室温よりも有意に高いと概ね結論付けられたと言える。各手法による温度の違いは、測定精度に起因していると考えられる。このため、空間分解能を高めるために500万画素CMOSカメラを購入した。これにより、粒子座標の空間分解能を大幅に高めることが可能となり、それぞれの手法から求められる温度の違いについて議論できるようになるであろう。粒子温度計測における新たな手法である励起される波に基づく温度計測法の検討を進めたため、結果として粒子投入法の改善には至らなかった。この点については、次年度注力していく予定である。本温度計測法については、国際会議1件、国内学会1件の発表を行った。また、日本航空宇宙学会英文誌への掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度の目標は大きく2つあり、一つは二体分布関数法による粒子温度計測、もう一つは結晶欠陥密度低減方法の検討である。前者に関しては、予定通りほぼ確立できただけでなく、新しい粒子温度計測法である、固相中に励起される波に基づいた温度計測へと発展つつある。この新しい方法は、固体物理学におけるデバイモデルと基本的には同じ考え方である。このことは、クーロン結晶が見た目上固相を示しているのみならず、格子振動に関して現実の結晶と同様の振る舞いをしていることを示唆するものであり、クーロン結晶の固体物理学への貢献が今後期待できるものである。また、粒子座標をより精度良く検出するための高画素数カメラを購入し、計測準備を進めている。これにより、従来精度が悪かった速度分布関数法による温度計測の精度向上が期待でき、二体分布関数法あるいは格子振動に基づく温度計測との比較・議論がより適切に行えるようになるであろう。一方、後者の結晶欠陥密度提言については、固相中の波に関する研究が新たに加わったため、予定よりも進捗が遅れた。新しい粒子投入器の部品製作、粒子投入器駆動回路製作、目の細かい精密メッシュの準備等を行ったものの、実際に実験に適用するには至らなかった。しかし、概ね準備は完了しており、準備完了次第、実験を進める予定である。特に目の細かいメッシュと新しい粒子投入器を用いることにより、一度にプラズマ中に投入する粒子数の制御性向上を期待している。少数の粒子を少しずつ投入することによって、徐々にクーロン結晶の大きさを大きくすることができるか、即ちクーロン結晶の結晶成長速度制御の可能性について現在よりも詳しく検討することが可能になるであろう。なお、もし結晶成長速度の制御性があまり改善しない場合においても、もう一つのアイデアである一方向溶融・凝固法との併用により、欠陥低減は可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成26年度計画 粒子温度計測に関しては、新しいカメラを用いたより高精度な粒子座標検出を行い、速度分布関数法、二体分布関数法、励起される波から求める方法の三種類の方法による温度計測を行う。また、求めた温度を相互に比較し、計測精度等について検討を行う。その際に結晶欠陥の影響も調べる。今のところ、どの手法に置いても粒子温度は室温よりも有意に高いことから、粒子へのエネルギー供給機構の検討を始める。さらに、精密メッシュと新しい粒子投入器を用いて、クーロン結晶の成長速度制御の可能性について調べる。その際、特に結晶欠陥を低減できるか、多結晶粒の大きさが大きくなるかといった観点から調べる。さらに、クーロン結晶に振動電場を印加し、クーロン結晶を一方向で溶融・凝固させられる技術の確立を目指し、振動電場印加用電極を試作する。また、振動電場印加用増幅器を製作する。 (2)平成27年度計画 平成27年度では、過去2年間で開発、確立した手法を用いて、低欠陥クーロン結晶を形成し、粒子温度計測を継続する。また、蓄積したデータを用いて、粒子へのエネルギー供給機構のモデル構築を図る。モデルと実験結果との比較を行い、粒子温度計測の妥当性について議論を行う。併せて、クーロン結晶における転位と現実の固体における転位との類似性・差異について議論する。これは、クーロン結晶と現実の結晶との類似性を示す新しい証拠となる可能性があるだけでなく、将来的には、既存の各種結晶、特に非線形光学材料として有用な酸化物単結晶や、高機能デバイス用化合物半導体における結晶欠陥低減手法の検討といった研究への発展も期待される。
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Research Products
(3 results)