2014 Fiscal Year Annual Research Report
分子集合体を取り囲む水のレオロジーを計測する-水が介在する生命現象の理解に向けて
Project/Area Number |
25620002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
景山 義之 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90447326)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水和水 / 分子集合体 / NMR / 緩和測定 / 動的核分極 / 流動性 / ナノ空間 / ESR |
Outline of Annual Research Achievements |
【1:計測装置の製作】前年に引き続きDNP-NMR測定装置を構築した。また、実験に必要な両親媒性ラジカル分子を合成するなど、試料準備も行った。 【2:リン脂質ベシクルの水和水を対象とした計測】リン脂質は水中で自己集合化し、中空球状のベシクルになる。ベシクルは、細胞膜のモデルとして興味が持たれ、その水和水の流動性計測も行われてきた。構築した装置の動作指標として、先例に倣った粒径数百nmの小さなベシクルの水和水の流動性計測を行った。次に独自の比較実験として、粒径十マイクロmの巨大ベシクルの水和水の流動性計測も行った。いずれも、40倍程度のNMRシグナル増強が観測された。巨大ベシクルの水和水の方が、大きな流動性を有していることが明示された。 【3:リン脂質ミエリン形の水和水を対象とした計測】両親媒性分子が形成する特徴的な自己集合体の一つにミエリン形がある。ミエリン形はチューブ状のマルチラメラであり、そのラメラ間にナノメートルスケールの水和水の層が存在する。この水和水を対象に、DNP-NMRによる緩和測定を行った。シグナル増強は40倍を超えた。水分子の流動性は低く、ラジカル分子との相関時間は著しく長かった。一方、水分子の運動挙動がバルク水とは大きく異なっており、先行研究で用いられてきたスピン密度行列に基づいた流動性の定量化は不適であった。 【4:課題】製作した装置について、計測中のサンプル温度上昇を現状以上に抑制していく必要がある。先行諸研究では、集合体に取り囲まれた水の運動性を評価する際、水分子の異方性のない回転運動を前提としてきた。一方、本研究のように、ナノレベルの空間に存在する水については、その前提が崩れていたため、異方的運動を前提に分子運動のモデルを推定し、実験結果との整合性を検討していく必要がある。今後は、機能的有機ラジカルの合成による、これまで行われてこなかった研究展開も期待される。
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Research Products
(9 results)