2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25620008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河村 純一 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (50142683)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | デカップル / 過冷却液体 / ガラス転移 / イオン伝導 / 超イオン導電体 / トレハロース / 水素結合 / 高分子固体電解質 |
Research Abstract |
本研究は、最近、申請者らが偶然発見した水・塩・多糖類からなる過冷却液体・ガラスの異常に高いイオン伝導性をヒントに、従来「デカップル」現象として知られている過冷却液体・ガラスにおける、並進・回転自由度のα緩和からの分岐を、より原子レベルで化学結合のダイナミクスとして明らかにする事を目的としている。当面の目標は、多糖類やポリアルコール系高分子および水分子を含むような系にイオン源として塩を添加することにより、水素結合とイオン結合との競合によるデカップルをという新らしいメカニズム(仮説)が、どの程度成り立つかをイオン伝導度・NMR緩和・拡散係数測定などを通して検証することである。 これまでに、(1) 水・ヨウ化リチウム・トレハロース系の熱分析を行い、ガラス化組成範囲、ガラス転移温度、結晶化温度などを決定した。(2) 同系について、ガラス化範囲を中心に液体状態からガラス状態までのイオン伝導度をインピーダンス法により測定し、VTF則に良く従う事を確認した。(3) 1H核と7Li核を対象に、バルス磁場勾配NMR法を用いて拡散係数測定を行なった。プロトンの拡散係数は、水分子>トレハロースの順で、リチウムイオンの拡散係数はその中間の値を示した。塩濃度が高く、イオン伝導度からデカップル系に分類される系では水分子とリチウムイオンの拡散係数はトレハロースより3桁も大きな値を示した。この結果は、水とトレハロースが作る水素結合ネットワークの間隙に水とリチウム塩からなる領域が存在し、その中をリチウムイオンが高速するものと考えられる。 一方、水素結合系の高分子固体電解質である、PVA, PVP, PANのブレンドポリマーに種々のアンモニウム塩を添加することで発現するプロトン伝導性に対し、イオン伝導度とNMR測定の結果、適切な塩濃度で自由なプロトン(デカップル・プロトン)が出現する事を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに、(1) ヨウ化リチウム・水・トレハロースの組合せについて、熱分解をせずに高濃度溶液を作成し、過冷却液体状態を安定に得る方法を開発した。また、熱分析、構造解析、イオン伝導度測定ならびにNMRを用いた拡散係数測定を実施し、当初計画どおりのデータ蓄積を進めて来た。 (2) その過程で、これまでデータが無かった純粋なトレハロースの過冷却液体状態における並進拡散係数をNMRにより測定し、誘電緩和や力学緩和と比較検討を行ない、拡散係数は他の緩和時間と大きくデカップルしているが、温度依存性は同一のマスターカーブに載る事が解った。 (3) 水素結合系の高分子固体電解質である、PVA, PVP, PANのブレンドポリマーに種々のアンモニウム塩を添加することで発現するプロトン伝導性に対し、インピーダンス法によるイオン伝導度測定と、プロトンNMRスペクトルの温度依存性を測定し、適切な塩濃度で自由なプロトン(デカップル・プロトン)が出現する事を明らかにした。 以上の結果は、5件の学術論文として発表されており、十分な成果が得られていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画にしたがって、今後は、水・トレハロース系に添加する塩の種類を変え、セシウム塩・カリウム塩・ナトリウム塩についても同様の実験を行う。その結果を陽イオン・陰イオンのイオン半径等により整理し、水素結合とイオン結合(配位結合)との強度比や配位数により、可動イオンがネットワークからデカップルする条件を明らかにする。 また、本研究の過程で新たに課題として出てきた、拡散係数の時間依存性と過冷却液体の不均一構造の問題についても、パルス磁場勾配NMR法でのエコー時間依存性に注意しながら実験を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、共同研究先の韓国およびインドの研究者との研究打合せ・国際会議等発表旅費および謝金を計上していたが、2013年度は申請者の多忙等により海外出張を予定どおり実施しえず、翌年度に成果発表などで使用する事を予定し、次年度使用とした。 2014年6月にシンガポールにて開催される、アジア固体イオニクス国際会議にて、成果の一部を発表する。また、その後にインドおよび韓国の共同研究者との打合せ・共同実験での旅費などに使用を予定している。
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Research Products
(5 results)